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倉敷・両児神社に伝説の仙薬? 氏子が奉納か 古くから漢方で利用

両児神社に保存されている「禹餘糧石」
両児神社に保存されている「禹餘糧石」
倉敷・両児神社に伝説の仙薬? 氏子が奉納か 古くから漢方で利用
 倉敷市松島の両児(ふたご)神社に伝説の薬が秘蔵されている。中国の古代王朝・夏の始祖、禹が残した食糧が石化したものとの伝承もあり、長寿や飢えなくなるといった効用があるという「禹餘糧石(うよりょうせき)」。国内では、古くから漢方薬としても利用されてきた“仙薬”だ。

 長径約25センチ、重さ約7キロの岩石で、卵形で表面は黄土色とこげ茶色が混ざったような色合い。普段は境内の倉庫に保管されている。箱書きによると、昭和8(1933)年に氏子から奉納されたらしい。

 禹餘糧は3世紀ごろから中国の薬学書に記載があり、その正体は褐鉄鉱の一種。粘土の周囲に殻のように鉄分が付着し、自然にできるもので、中の粘土が縮んだものが薬とされる。薬用植物や鉱物などの生薬に詳しい漢方医療史家・濱口昭宏さん=堺市=によると「下痢に効果があったという記録があるが、入手が難しく貴重な薬だった。近年はほとんど使われていない」という。

 両児神社の北約1キロにある二子地区には、かつて、禹餘糧の産地とされた「禹余糧山」があった。「岡山県史蹟名勝天然紀念物調査報告第5冊」(1925年発行)によると、この山からは団子状の石が採れ、中の餡(あん)状のものを食べると飢餓に耐えることができる、という伝説も残っていた。井上博文宮司(51)は「特に立派なものが見つかったため納めてくださったと聞いている」と話す。

 60年代の開発で山は消え、地区が生薬の産地だったことも忘れられた。神社の禹餘糧石は殻が割れていないので中身を確認できないが、井上宮司は「地域の歴史を示す宝として、これからも大切に保管していく」と話した。

(2023年06月25日 17時16分 更新)

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