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相続放棄の熟慮期間

 誰かが多額の借金を抱えて亡くなった時、その相続人が債務を免れるためには、3カ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要があります。しかし、亡くなった方に借金があることを知らず、債権者からの請求でその存在に気づいた時には、既に3カ月が経過していたということがあります。この場合でも、相続放棄はできるのでしょうか。

熟慮期間3カ月の起算点は
相続人が相続開始を知った時


 相続放棄の手続きは、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月」の期間(熟慮期間)内に行う必要があります(民法915条)。従って、通常は、その人(被相続人)が亡くなったことを知った時から3カ月を数えるということになります。たとえば、5月28日に被相続人の死亡を知った場合、8月28日までに相続放棄の手続きが必要です。その日が過ぎてしまうと、もはや相続放棄はできなくなります。

 しかし、それでは今回のケースのような場合に相続人が酷な立場に置かれます。そこで、判例では、3カ月以内に相続放棄をしなかったのが、(1)相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ(2)そう信じたことについて相当の理由がある場合には、熟慮期間は、相続人が相続財産の存在を認識した時、もしくは認識できるようになった時から起算する、として、熟慮期間の起算点を繰り下げました(最高裁昭和59年4月27日判決)。

財産があることを知らなかった場合
熟慮期間が経過していない可能性も


 ですから、単に借金があることを知らなかっただけでなく、財産があることも知らなかった場合には、熟慮期間が経過していない可能性があります。また、実務では、熟慮期間の起算点を繰り下げることができるかどうかについて、前述の判例の基準よりも緩く運用する傾向があり、相続人が相続財産の存在についてある程度知っていても、その後予期せぬ多額の債務が判明した場合、相続放棄を受理してくれることもあります。

 いずれにせよ、家庭裁判所に対して適切に事情説明をする必要があります。このような件でお悩みの際は、ぜひお近くの弁護士にご相談ください。


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先生紹介

  • 安達祐一 先生

    安達法律事務所

    倉敷市鶴形1-4-15 シャトーブリアン2F

    TEL.086-423-5311 http://www.adachilaw.jp/

    2004年東京大学法学部卒業。同年司法試験合格。司法修習を経て06年弁護士登録。10年、生まれ育った倉敷市内で開業。

    「地元住民の方に密着したサービスを心がけています。倉敷センター街の先にある事務所で、ご相談をお待ちしています」

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