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「プレ値が付いているからみんなが欲しがるモノに間違いない」二次流通市場がこの10年で拡大、購買心理も変化【スニーカー解説】

二次流通で特に高額がついているモデル「AIR JORDAN1 RETRO HIGH THE TEN CHICAGO」
二次流通で特に高額がついているモデル「AIR JORDAN1 RETRO HIGH THE TEN CHICAGO」
 スニーカーをあらゆる側面から解説した『スニーカー学』(KADOKAWA刊)が発売された。著者は、スニーカーショップ「atmos」創設者で、スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソンとしても知られる本明秀文氏。二次流通、プレ値、SNS消費、インバウンド、投資、NFT、真贋鑑定、コラボ、テック系といったキーワードをもとに、スニーカーブームのからくりや、「投資財」としての役割なども解説する。同書から、二次流通市場の拡大背景について解説した内容を、一部抜粋して紹介する。

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■二次流通のスケールアップ

 2014年以降のスニーカー市場で非常に特徴的なのが、一次流通と二次流通の境目が曖昧になっていったことです。

 なぜなら90年代のスニーカーブームは一次流通で完売したアイテムが、二次流通市場においてプレ値で転売されることで熱狂していきましたが、今は逆に二次流通で付加価値が付いた時の価格を前提として、一次流通で売れ行きが左右される状況になっているからです。いわば、転売需要を織り込むことで一次流通が成立している、と言えるでしょう。

 その結果として、今までよりもずっと売れるものと売れないものがはっきりと分かれるという現象が起こるようになりました。つまり、二次流通でプレ値が付くことが予想されるアイテムに対しては一次流通の時点でも人気が集中し、そうでないものは一次流通でもまったく響かないという構図が出来上がっています。

 また、二次流通市場で人気が出るアイテムの多くは抽選販売のため、一次流通の時点で手に入るかどうかは運任せになってしまうことも、消費者目線で見た時に二次流通市場が事実上の一次流通のように感じられることに拍車をかけています。

 事実、今の若いスニーカーファンの多くは一次流通で手に入れるか、二次流通で手に入れるかということに対して価格差以外のデメリットを感じていません。

 そして、これほどまでに二次流通の規模が拡大すると、メーカーもその存在を無視することは難しくなってきます。二次流通において、どんなモデルに人気が集まっているのか。カラーや素材ごとにプレ値の付き方に違いはあるのか。昨年と比べて流通量や価格に変化は起きたかなど、メーカーは二次流通の市場の動向を日々チェックしながらニューアイテムをドロップ(※)するようになっていきました。

 では、たとえば定価1万6000円のスニーカーが二次流通で3万6000円で取引されているからといって、メーカーは定価3万6000円に設定すればよいかというと、そうではない。

 なぜならば二次流通市場でスニーカーを購入しているのは、さらに相場が上がると信じて転売用に購入している人か、「プレ値が付いているからみんなが欲しがるモノに間違いない」と思って購入している人たちだからです。

 仮に二次流通で取引されている価格を定価として設定したとしても、若者が気軽に買える金額から乖離(かいり)してしまうため一次流通の時点でまったく売れなくなり、二次流通市場でプレ値が付くこともないでしょう。つまり、言い換えるとメーカーも二次流通での取引価格を意識しながら定価を決定しなくてはいけない状況になっています。

 ひと昔前のスニーカーファンはたとえ1回か2回だけだったとしても、とりあえず履いて外に出るのが当たり前でした。

 ですが、今の若い子たちと話していると、彼らは仮にスニーカーを100足持っていたとしても、実際に履いているのは5足ほど。

 これはスニーカーが従来のコレクションピースとしての存在から脱却し、投資・投機的商品として捉えられるようになった証拠でもあります。また、SNSが発達したことも、買ったスニーカーを履かずに保管するという一見不合理な購買行動に拍車をかけています。

 ハイプスニーカーを所有しているという自己顕示欲を満たすためにInstagramに本物の写真をアップしつつ、実際に街で履くのはそれらの偽物というケースが見受けられるのも、その証拠と言えるでしょう。

 ハイプスニーカーブームはリセール需要があったからこそ、過熱していったという側面は否定できません。

※ドロップ…シーズンごとのコレクションとして展開するのではなく、アイテムが完成したタイミングで発売をする方式。スニーカーやストリートブランドで多用される。

■本明秀文プロフィール
atmos創設者。元Foot Locker atmos Japan最高経営責任者。1968年生まれ。90年代初頭より、米国フィラデルフィアの大学に通いながらスニーカー収集に情熱を注ぐ。商社勤務を経て、1996年に原宿で「CHAPTER」をオープン。2000年に「atmos」を開き、独自のディレクションが国内外で名を轟かせ、ニューヨーク店をはじめ海外13店舗を含む45店舗に拡大。2021年8月、米国の小売大手「Foot Locker」が約400億円で買収を発表。スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソン。

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(2024年04月24日 06時00分 更新)

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