【ファジアカ生 参加企画】ファジは先制点で勝利もぎ取れ 栃木日曜アウェーの意外なデータとは?

【ファジアカ生 参加企画】ファジは先制点で勝利もぎ取れ 栃木日曜アウェーの意外なデータとは?
 サッカーJ2ファジアーノ岡山(10位)は29日、ホーム・シティライトスタジアム(岡山市北区いずみ町)で栃木(19位)と対戦します。J1昇格プレーオフ(PO)進出には勝つしかないファジアーノ、J2残留へ勝ち点を積み上げたい栃木。どちらも負けられない重要な一戦です。クラブ主催の「ファジアーノ岡山 アナリティクスアカデミア」(愛称・ファジアカ)2期生の池上佳介さんと村橋志柊さんが、栃木の戦術や注目選手を独自の視点で分析。ファジホーム戦で注目してもらいたいポイントや、栃木の日曜アウェーゲームの意外なデータを紹介します。

⚽J2昇格同期対決


 栃木SCは1947年、栃木教員サッカークラブとして発足。栃木県を代表するサッカーチームとして活躍してきた。2007年にJリーグ準加盟が承認され、翌08年にJFL(日本フットボールリーグ)で準優勝。Jリーグ加盟条件をクリアし、Jリーグ2部の昇格を果たした。ファジアーノ岡山とは、同じ年にJリーグ参入を果たしたいわゆる「昇格同期」で、良きライバルとして熱戦を繰り広げてきた。

 ここで栃木と対戦したホームゲームを振り返りたい。平日開催、台風接近による悪天候、試合会場が鳥取県-と悪条件がそろい、615人の観衆(コロナ禍を除くとJ2最少入場者数)の前で行われた2009年、クリスティアーノ選手(現ヴァンフォーレ甲府)に豪快なオーバーヘッドシュートを決められた2013年、ファジに復帰した上田康太選手の華麗な直接FKや高卒ルーキー阿部海大選手のプロ初ゴールなどで快勝した2018年…。思い返せば、懐かしい試合がよみがえってくる。

 ちなみに対戦成績は11勝6分け9敗とファジが先行しているが、ホームでは2019年以降勝利をつかめていない。J1昇格プレーオフへ望みをつなぎたいファジアーノ、勝ち点を積み上げてJ2残留を決めたい栃木の戦いは激しいものになるに間違いない。
ファジアーノ岡山対栃木SCの対戦成績一覧(池上さん作成)
ファジアーノ岡山対栃木SCの対戦成績一覧(池上さん作成)

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 今季の栃木は堅守が光る。その戦術には後で詳しく紹介する「ペンタゴンの要素」がある。ファジは相手の1トップとの競り合いで優位性を発揮し、スペースを使った攻撃展開を試みるであろう。この試合には、新たな要素も加わり、外国人FWの対決が実現する可能性がある。どちらのチームも得点を奪うチャンスがある中で、勝敗のカギを握るポイントを詳しくみていきたい。

⚽堅守速攻の栃木 特徴的な陣形「ペンタゴン」


 栃木は今季、基本的なフォーメーションを3-4-2-1とし、直近の3試合でも変化は見られない。守備時は5バックに可変し、相手の攻撃をけん制している。この守備の安定感は、今季3失点以上した試合がわずか1試合しかないことからも明らかで、大敗が少ないチームと言える。

 攻撃時には、中盤を省略し、1トップを中心にした攻撃陣形を採用している。2列目の選手がボールを追い越すか、セカンドボールを競り合いで回収し、前進を試みるスタイルが特徴的。堅い守備からワンチャンスで仕留める、まさに堅守速攻なチームだ。
(村橋さん作成)
(村橋さん作成)

 注目したいのは特徴的な陣形「ペンタゴン(五角形)」(図の薄緑色の部分)だ。役割が決まっている前方の5枚と後方の5枚に分けた5-5のユニットはぜひ注目してほしい。

 この陣形の狙いは、1トップの頂点が相手の最終ラインにプレスをかけ、残りの4人が中央に絞り、サイドにボールを誘い出すことだ。サイドに出たボールを後ろの両翼が出足の速さで奪取を仕掛ける様子は何度も見られた。客席からは、きれいな五角形が見られるため、スタジアムや映像でぜひ見つけてもらいたい。

 GKの安定感も特筆すべき点だ。中でも、藤田和輝選手(背番号41)はスタメン出場した29試合中29失点、平均1失点という安定したパフォーマンスを見せている。藤田選手がU-22の日本代表から戻ってきた今、そのパフォーマンスにも注目が集まる。

 背番号99のFW対決もあるかもしれない。2023年からJリーグのユニホーム要項が変更され、1~99が使えるようになった。ファジアーノのルカオ選手(背番号99)の身体能力は言うまでもないが、今夏J1京都から期限付き移籍した栃木のイスマイラ選手(背番号99)もJ2屈指の身体能力を持つFW。イスマイラ選手加入前の栃木は1試合平均0.84得点だったが、加入後は1試合平均1.15得点とチームの攻撃力が明らかに向上している。ルカオ選手(191センチ)は1得点、イスマイラ選手(188センチ)は3得点と多くないものの、大型選手の対決も楽しみにしたい。

⚽ファジ 是が非でも取りたい先制点


 整備されている栃木の守備は強固である一方で、ボランチと最終ラインの間にはスペースが空いていることが多い。また、後方の両翼は出足が速く、ボールを奪おうという前向きの矢印が強い。そのため、栃木DFラインの前、MFの後ろのスペースを使うこと、サイドの勢いをいなしてシンプルに突破できるチャンスが増えると予想される。第38節では山形にこのスペースに縦パスを通され、先制点を奪われていた。ファジアーノは、相手の1トップとの競り合いにおいて優位性を発揮し、ボールを持つ展開が多くなる状況でスペースを生かし、相手の速攻を防げるかに注目したい。

 ファジアーノは5試合連続で先制点を奪えていない。これは2022年に木山隆之監督が就任して以来最長の記録だ。木山監督がJ2で岡山の指揮を執った80試合中、先制した試合は44試合(30勝12分け2敗)で勝率68.2%、負けた確率はわずか4.5%。先制点がいかに重要かを物語っている。

 また、栃木は現在19位でJ2残留が決まっていない上、J3降格圏21位の大宮が4連勝と絶好調。残留に向けて勝ち点がのどから手が出るほど欲しいはずだ。栃木は前述のとおり堅守を誇るが、試合展開や時間帯によっては勝ち点1でも確実に積み上げるべく、さらに強固な守りを固める可能性もある。そうさせないためにも試合開始からアグレッシブに戦い、先制点を取れるかに注目したい。

 栃木の守備は、個々の選手が粘り強く対応することに加え、シュートに対して複数の選手が身を挺(てい)してブロックを行うなど、「日光東照宮」のような荘厳さを体現している。ファジは高橋諒選手(背番号42)や末吉塁選手(背番号17)といったWG(ウイング)が高い位置をとり、左右にしっかり揺さぶり、寄せを遅らせ、シュートコースを開けることが重要となる。

⚽栃木は日曜アウェーが苦手?


 最後にファジサポにとって興味深いデータを紹介したい。

 今シーズンの栃木は日曜開催のアウェーゲーム10試合が0勝1分け9敗(1得点13失点)。「日曜のアウェーゲーム」が鬼門なのだ。
【ファジアカ生 参加企画】ファジは先制点で勝利もぎ取れ 栃木日曜アウェーの意外なデータとは?

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 29日は我らがファジアーノ岡山のホームCスタでの日曜開催。栃木はジンクスを打ち破れるのか。今回の試合でもデータ通りの結果になるのか注目してみよう。

 この日は先着1万人に岡山県PRキャンペーン「岡アツ!」とコラボしたタオルがプレゼントされる。セットプレーのチャンスのときはこのタオルを回し応援を盛り上げよう。柳育崇選手(背番号5)が2020、21年シーズンを過ごした古巣相手に、「柳育崇ここにあり」と言わんばかりの豪快なヘディングを叩き込んでくれるはずだ。(池上佳介、村橋志柊)

〇筆者紹介
池上佳介さん
池上佳介さん

池上佳介さん ファジアカ2期生。ファジアーノ岡山を応援し始めて気付けば10年以上が経過していました。今では完全にファジアーノが生活の一部に溶け込んでおり、趣味で試合後のスタッツを見たりデータの集計を行ったりもしています。ファジアカでは攻撃の狙いや戦術、データの解釈の仕方など、さまざまな観点からサッカーの楽しみ方を考え、学ばせていただきました!
村橋志柊さん
村橋志柊さん

村橋志柊さん ファジアカ2期生。ファジアカを通じてファジアーノ岡山を応援するようになりました。海外ではリヴァプールを応援しています。Jリーグと海外サッカーを見ていたら、土日が終わっていることもしばしば。ファジアーノからも海外挑戦する日本人選手が出てうれしいです。ファジアカを通して、いろいろな人と意見を交換しながらチームを分析するというのは、間違いなくフットボールを見る視点・楽しみ方が広がりました!

〇ファジアーノ岡山フットボール本部アドバイザー・ファジアカ講師 久永啓
久永啓さん
久永啓さん

 見方を知ればサッカーはもっと楽しめる!

 サッカーを見る時に何に着目するかは人それぞれです。そこに唯一の正解や優劣はありません。一人ひとりの経験や知識、関心によって視点は変わります。その違いを楽しみ、学び合い、より広く深くサッカーを見る力を養っていくのがファジアカです。

 今回は、学びへの意欲と持ち前の絶妙な切り口によって分析力が磨かれてきた池上さんと、戦術とデータを用いた分析がグループメンバーからの刺激によってスケールアップした村橋さんとのペアです。

 「あの試合のあのプレー、覚えてますよ!」「このデータを使うともっと見どころが増えそうですね!」と、近い年齢でその時代のサッカーを見てきたからこそ共感し合える視点を取り入れて分析してくれたのではないかと思います。ファジアカ2期を別グループで学んだ同年代のお二人による栃木戦の見どころです。

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ファジアーノ選手名鑑2024
ファジアーノ岡山の歩み

J2順位表

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順位 チーム 勝点 試合数 得失差
1 清水エスパルス 37 16 15
2 V・ファーレン長崎 33 16 17
3 ベガルタ仙台 29 16 5
4 横浜FC 28 16 13
5 レノファ山口FC 27 16 9
6 ファジアーノ岡山 27 16 7
7 いわきFC 26 16 12
8 ジェフユナイテッド千葉 24 16 16
9 ヴァンフォーレ甲府 22 16 3
10 ブラウブリッツ秋田 22 16 2
11 大分トリニータ 22 16 1
12 愛媛FC 21 16 -4
13 藤枝MYFC 20 16 -10
14 水戸ホーリーホック 18 16 -2
15 徳島ヴォルティス 18 16 -10
16 モンテディオ山形 17 16 -6
17 ロアッソ熊本 17 16 -10
18 鹿児島ユナイテッドFC 13 16 -17
19 栃木SC 12 16 -21
20 ザスパ群馬 6 16 -20

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