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NHK岡山は出世ルートなのか? 元アナや元局長にたずねてみた

岡山県民の間で「出世ルート」とうわさされるNHK岡山放送局
岡山県民の間で「出世ルート」とうわさされるNHK岡山放送局

 4月から新体制となったNHK「ニュースウオッチ9」のメインキャスター星麻琴アナウンサー、3月まで「ニュース7」のメインキャスターを務めた和久田麻由子アナウンサー。この二人にはある「共通点」がある。それは初任地が岡山放送局ということだ。この二人以外にも、数々のエースアナウンサーや記者を輩出してきた岡山放送局。岡山県民の間では「NHK岡山は出世ルートなのでは」といううわさが流れることもしばしばだ。本当にそうなのか、元関係者に直撃してみた。

あの人も初任地は岡山放送局


 Xには岡山県民とみられる投稿者が「和久田アナ、星麻琴アナ、今はTBSの南波アナなど、岡山が初任地のアナはNHKの出世コースだと信じています」「(初任地時代の星アナを)ハラハラ見ていたんで 親戚みたいな子がどえらい出世」とポスト。二人の活躍や成長に目を細めているようだ。

山陽新聞夕刊でお薦めの本を紹介してくれた和久田アナ=2012年4月
山陽新聞夕刊でお薦めの本を紹介してくれた和久田アナ=2012年4月

 ほかにもNHK大河ドラマ「光る君へ」の語りを担当する伊東敏恵さん、人気番組「チコちゃんに叱られる!」に出演する塚原愛さんは岡山が初任地。ヤフー知恵袋にも「NHK岡山放送局はアナウンサーの出世コースなんですか?」という質問が書かれており、不思議に思っている人も多いようだ。記者では、テレビ朝日「報道ステーション」のメインキャスター大越健介さん、故安倍晋三元首相の番記者として知られるジャーナリストの岩田明子さんも岡山だ。

「出世ルート」といわれる理由


 「間違いなく、岡山は出世ルートです」

 そう断言するのは元NHKアナウンサーで、ジャーナリストの堀潤さん(46)だ。2001年入局で、自身も初任地は岡山放送局だった。その後、東京に異動し、「ニュースウオッチ9」などの報道番組で特ダネを掘り起こし、活躍した。

 堀さんはNHKの最終面接の待合室で居合わせた学生の一人に「初任地で西に行けば出世する」と言われたという。「その学生は親戚にNHK関係者がいたんです。その後、採用され、初任地が岡山放送局に決まった時は一瞬『出世するかも』と思いました」と笑う。「局内の人に赴任地を聞かれ、『岡山です』と答えると『大局だな』と言われていました」と振り返る。

「NHK岡山放送局は出世ルート」と話す堀さん
「NHK岡山放送局は出世ルート」と話す堀さん

 注目すべきはコールサイン(呼び出し用符号)。堀さんによると、重要拠点局にはKが付いており、東京のAK、大阪のBK、名古屋のCKと続く中、岡山は「KK」。ちなみに福岡は「LK」で、なんと岡山のほうが早い。「中四国と関西を結ぶ要とされている」と堀さんは話す。

 堀さんが出世ルートと考える理由はそれだけではない。岡山は取材経験が積める地として鍛えられるという。「経済や文化、スポーツなど、それぞれに大手や強豪があり、多岐にわたる取材ができる。人口減少や高齢化が急速に進む中山間地域のような地域課題もあり、『日本の縮図』のような場所。『岡山にいたのだから、あれもこれもできるはず』ということで、東京に引っ張られる一つのルートになっていると思います」と語る。

NHK時代の堀さん
NHK時代の堀さん

元岡山放送局長にも直撃


 元NHK岡山放送局長にも質問をぶつけてみた。現在は岡山県備前市の副市長を務める杉浦俊太郎さん(66)だ。局長をしていた2012年~14年は和久田アナ、星アナのほか、初任地ではないが「NHK NEWS おはよう日本」に出演する三條雅幸アナも在籍していた。

 「出世ルートと言われているのですか?」と驚きつつも、自身が局長時代にしたある取り組みを教えてくれた。局長に赴任する前に、岡山の人から「NHKは地域と距離がある」と指摘されたことがあったという。「地域を愛するアナウンサーでなければ、地域に愛されるアナウンサーにはなれない」と考え、積極的に街に繰り出すように伝えたという。

 例えば、星アナの新人研修は岡山県真庭市で実施。のれんで彩られた古い町並みや200年以上続く蔵元を訪ね、「感想」ではなく、この地域の魅力を伝えるレポートを宿題として課したという。また「大物に会いに行くように」とも指導。「岡山を動かしている人が、どんなことを考えているのか、経済、文化人らに直接会い、どん欲に吸収することを呼びかけました」

星アナも新人研修で訪れた岡山県真庭市勝山地区
星アナも新人研修で訪れた岡山県真庭市勝山地区

 そうした中で地域に顔見知りが増え、和久田アナも出勤途中に地元住民から声をかけられることがあったそうだ。「地域に溶け込んで生活する中で、伝えたいことが増え、自分の言葉で魅力を語れるようになる。それによってスキルが自然と磨かれていくのかもしれません」と杉浦さんは話す。

実はほかの地域でも…


 ところが「ここが出世ルートだ!」と考えるのは、岡山に限ったことではないとも。「首藤奈知子アナがいた松山放送局も、副島萌生アナがいた大分放送局も『育てた地域』として、盛り上がっていると聞いたことがあります。視聴者の皆さんに、娘や息子のように見ていただけることをありがたく思いますし、たくさんの父母がいることは、アナウンサーにとって幸せなこと」と言う。「ただ、岡山の皆さんの熱量はその中でも強いほうだと思います」とお墨付きをもらった。

 2021年入局で初任地の岡山から4月に札幌放送局に異動した松本真季アナはまさに「星麻琴ルート」をたどっており、Xでは「松本真季さん。岡山市から応援している」「岡山での数年間がいい思い出になってくれたらいいなあ、と思うのと同時になるべく早く東京放送局に行ってほしいなあと思う」といった投稿がある。勝手な「親心」で見守っていきたい。
桃太郎バージョンの「どーもくん」
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(2024年04月13日 16時30分 更新)

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