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ローカル線の存廃 問われる鉄道網の在り方

 利用が少なめのJRローカル線をどうするか。今、岐路に立っていると言えよう。

 JR芸備線の備中神代(新見市)―備後庄原(庄原市)間68・5キロ区間の存廃を議論する「再構築協議会」の初会合が26日に広島市内で開かれる。昨年10月に導入された新制度に基づく全国初の開催だ。各地のローカル線の行方を左右する議論にもなろう。

 岡山、広島県と新見、庄原市、同線・備後庄原―広島間の三次、広島市、JR西日本や両県バス協会、学識経験者が参加する。自治体の支援などを視野に鉄道を存続させるか、バスなどに転換するか。原則3年以内に結論を出す。

 議論の前提として、過去の経緯を踏まえておく必要がある。1987年、国鉄を分割民営化した際に、JR旅客6社の収益格差をならして、それぞれがローカル線を含めて経営できる枠組みとした。ローカル線が赤字になるのは織り込み済みで、JR西は新幹線や大都市圏の収益を充てる「内部補助」でローカル線を維持する形となった。

 しかし、乗客の減少でJR西は「自社単独で路線維持はできない」とし、国に再構築協議会の設置を求めた。少子高齢化など時代状況の変化で当初描いた仕組みがうまく機能しなくなった面はある。

 その上で、ローカル線を含めた全国的な鉄道網をどうすべきかが問われていよう。国鉄改革はもともと国政の課題だった。路線維持を国民に“約束”していた側面もある。国はその責任をどう考えているのか。路線維持について、国が後ろに引いた中で、主に自治体の責務によるJRとの協議に委ねられるとしたら、政策的な齟齬(そご)が生じる。

 ローカル線存廃問題は、コロナ禍による乗客減でJR西の連結決算が赤字になるなど経営悪化の中で顕在化した。その後の利用回復などで2023年3月期は3年ぶりに黒字化した。業績好調でJR西は先日、正社員の給与を4月から平均6・3%引き上げるとした。賃上げ率、引き上げ額ともに過去最高水準という。地方側から「なぜ路線廃止が必要なのか」という疑問が出ているのは当然だろう。

 JR西は昨秋、利用が少ない17路線30区間の20~22年度の平均収支を公表した。今回の存廃議論の対象線区は、赤字額が最少の区間を含むなど赤字幅は比較的小さい。乗客が少ないが、経費もさほどかからないからだ。仮に路線を廃止してバス転換しても、経営改善にはあまり役立たないのではないのか。

 これまで鉄道はJR任せで、減便などサービス水準が低下し乗客は減少、さらなる減便といった“負の連鎖”に陥ってきた。協議会の設置を契機に、国や自治体、JRなどが連携を深めて、運行の改善などを図ることが重要だ。

(2024年03月25日 08時00分 更新)

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