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わんにゃんメディカ

自民の規正法案 政治不信払拭には程遠い

 これで国民の政治不信の払拭につながると思っているのだろうか。見直しの踏み込み不足が甚だしい。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、自民が国会に提出した政治資金規正法の改正案である。焦点の一つであるパーティー券購入者名の公開基準額は「10万円超」とした。現行の「20万円超」から引き下げてはいるが、公明党などが主張する「5万円超」とは大きくかけ離れている。

 券の購入はパーティーの「対価」との位置付けだ。しかし、自民派閥のパーティーを巡っては、大半が利益率8~9割に上ったとして、国会で野党から「事実上の寄付だ」と強い批判を受けた。「5万円超」は寄付の公開基準と同じ水準である。

 自民と公明は今月9日、規正法改正の与党案に大筋合意していた。ただ、パーティー券購入の公開基準は「20万円超」から引き下げることでは合意したが、具体的な金額は先送りしていた。その後、実務者協議を重ねたが折り合えず、自民単独での法案提出という異例の展開となった。

 「10万円超」を譲らない自民には、基準を引き下げ過ぎれば、公開を敬遠する企業・団体による買い渋りが起きるとの懸念があるとされる。「公開基準額の多寡が裏金事件の原因ではない」との声も根強いという。だが、基準が緩ければ緩いほど、不明朗な資金の流れが生じやすくなるのは間違いない。政治資金の不透明さをなくすには厳格な制度設計が欠かせない。

 パーティー券購入の公開基準とともに、自公の協議で一致を見なかったのが政策活動費の扱いだ。使途公開の義務がなく、自民が党幹部に年間10億円前後を支出していることが問題視されている。

 自民案は、政策活動費を支給された政治家が使途の項目別金額を党に報告し、党が政治資金収支報告書で公表する。項目は「選挙関係費」など大まかなもので、対象も1件50万円を超える場合だ。公明が主張する明細書の義務付けは見送った。実効性があるのか疑問は大きい。

 そもそも規正法を見直すきっかけとなったのは、自民派閥の政治資金パーティーを舞台とした事件である。真摯(しんし)に反省し再発防止を目指すのであれば、他党よりも厳しい見直し案を打ち出してくるべきではないか。実態は後ろ向きな姿勢が顕著である。「政治とカネ」の透明化に向けた意識が著しく乏しいと言わざるを得ない。

 改正案は22日から衆院の特別委員会で審議入りする。野党も近く改正案を提出する。多くの野党は自民案が触れていない「企業・団体献金」の禁止も訴えており、主張の隔たりは自公間よりも大きい。

 自民は今国会中の成立を目指すが、期限ありきの拙速な議論は許されない。熟議を尽くし、規正法の実効性を高めることが求められる。

(2024年05月19日 08時00分 更新)

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