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映画『陰陽師0』ティーチインイベント 佐藤嗣麻子監督や呪術監修の加門七海氏が裏話

映画『陰陽師0』特別ティーチイン付き上映イベント (C)2024映画「陰陽師0」製作委員会
映画『陰陽師0』特別ティーチイン付き上映イベント (C)2024映画「陰陽師0」製作委員会
 佐藤嗣麻子監督、呪術監修の加門七海氏、漫画『陰陽師』作者の岡野玲子氏が12日、都内で行われた映画『陰陽師0』特別ティーチイン付き上映イベントに参加した。

映画『陰陽師0』特別ティーチイン付き上映イベントに参加した佐藤嗣麻子監督

 今作は、安倍晴明生誕1100年を記念し、夢枕獏氏『陰陽師』シリーズ(文藝春秋)を映画化。学生時代の晴明(山崎賢人※崎=たつさき)が源博雅(染谷将太)から徽子(よしこ)女王(奈緒)を襲う怪奇現象の解決を頼まれ、平安京を巻き込む凶悪な陰謀と呪いが動き出す呪術エンターテインメント。

 観客からの大きな拍手で迎えられた3人。佐藤監督は「何度も観ていただいている方もいらっしゃると思いますが、本当にありがとうございます」と笑顔であいさつし、加門氏は「きょうは休日に集まっていただきうれしいです。すでにご覧になっている方も改めて楽しんで」、岡野氏は「監督とは漫画の連載の当初に原作の獏さんからご紹介を受け、その時から映画を撮りたいとおっしゃっていました。今回、晴れて映画化されて本当によかったと思います。おめでとうございます」と改めて映画の公開をお祝いした。

 佐藤監督の念願かなっての映画化ということで、映画を観た感想を問われると、加門氏は「何回観ても自分がどこを見るかによって印象が変わる。改めて関わることができてよかったと思います」と佐藤監督と顔を見合わせ、岡野氏は「欲望が渦巻く陰陽寮と、徽子女王と博雅の純愛の、二つの流れがあって。この二つが対照的な呪であり、まことに陰陽師らしい映画だと思います」と絶賛した。

 また、実在した最強の呪術師・安倍晴明がどんな人物だったと考えるかという話題になると、加門氏は「晴明は史実を考えると、政治的な駆け引きの上手い人物だと表現されていますが、彼は陰陽師という立場上、人の欲望を見続けてきた人間です」と分析すると佐藤監督も賛同し「そうですね、唯一神様になった陰陽師であると加門さんがおっしゃっていて。昔の人は祟りを恐れて神様にするという監修がありました。晴明からの祟りを恐れて神様にしたのでは」とコメント。岡野氏は真面目な人といい、「霊剣を修理したということが史実にあって、それを考えると真面目で物知りだけど表に出されずに上の人に名前をとられてしまったのではないか」と、それぞれが思う“晴明像”を明かした。

 舞台となった平安中期は、文献にあまり情報がなく、平安京を再現するのには苦労もあったそうで、「平安中期の資料がなかったのでものすごく調べました『日本の服装』という書籍の中で、夏の装束があるのですが、胸がはだけていて、こういう感じにしたいと、実際は袴を上にあげました。それが今回の女性の衣装です。清涼殿以外の建物は、中国を模したという史料に基づいてつくっています」と、実際の参考資料を手に取り解説した佐藤監督。インタビューの中で、呪術好きがより楽しめる2つのポイントを質問していたことについて、加門氏自身が回答を発表する場面も。「『金龍封印』は、実はとても格の高い、めったに表に出てくることのない符が元になっています。さて、それは何でしょうか?」という質問についての回答は「これは流符といいます。中でもあの符は雷の神様が用いる符で、力の強い符です」といい、続いて「晴明が片手で印を結ぶシーンがあります。昔の呪禁師(じゅごんし)が使う印なんですね。さてそこはどのシーンでしょうか?」という質問には「火龍が追いかけて来るシーンなんですが、監督から走りながら結べる印が欲しいというリクエストがありまして、掌で結ぶ印というものを作りました。ぜひもう一度見て確かめてください」と、呪術ファン必見のコメントをしていた。

 さらに「平安時代の沓(くつ)は、実際にあのように走れたのでしょうか」という質問に佐藤監督は「走れますが、長距離は難しいかもしれません。アクションの時はアクション用の沓をつくりました」と答えた。「陰陽寮が暗く、孤独が象徴される中で、花が印象的でした。史実に基づくものなのか、意図があればお伺いしたいです」という疑問には、佐藤監督が「今でも、祭りの時に斎王が花を頭につける慣習があります。平安以降、清少納言の時代にはこのような慣習がなくなったとも言われています」とした。「安倍晴明が死後1000年経っても人を惹きつけるのはなぜだと思いますか」という問いには、岡野氏が「京都の晴明神社は人々から感謝されつくられた神社だと思いますし、晴明の魂の人柄だと考えています」とした。

 映画に隠された意図を探る興味深いトークが繰り広げられたイベントも終盤を迎え、岡野氏は「漫画の陰陽師を知らない人もいらっしゃると思いますが、この機会にぜび読んでみてください。漫画が完結した2005年は晴明が亡くなって1000年という年でした。今年はそれから19年ということで、太陽と月の周期が一巡する時なので、そういったタイミングで映画になり、晴明と博雅が活躍するのはとても意味のあることだと思います」とし、加門氏は「きょうの話を聞いてもう一度映画を観たいと思っている人もいらっしゃるのでは。何回観ても面白いので、欲望のままに何度でも観てください」と最後までしっかりPRし、佐藤監督は「呪とは何かとか、どうすれば思い込みにかかるか、解けるかというのを描いた作品です。現代にも使えることなので、なんでも鵜呑みにしないとか、呪を祓ってから観てみてください」と、最後の舞台あいさつで映画に込めた強い思いを語り、イベントは幕を閉じた。

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(2024年05月12日 18時56分 更新)

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