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ギャンブル依存症 オンラインの危険周知を

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳の違法賭博問題はギャンブル依存症の深刻さを浮き彫りにした。日本国内でもオンライン賭博が広がっており、危機感を持たねばならない。今月14日から20日まではギャンブル等依存症問題啓発週間である。

 元通訳は違法なスポーツ賭博にのめり込んで巨額の借金を抱え、大谷選手の銀行口座から不正な送金を繰り返していたとされる。事件を機に、国内のギャンブル依存症の現状にも目を向けたい。

 厚生労働省が2020年に実施した調査では依存が疑われる人は約2%おり、日本の人口に換算すると約200万人に上る。世界保健機関(WHO)は精神疾患の一つと位置づけており、脳の機能が起こす病気である。専門家は「条件がそろえば、誰でもなり得る」と警鐘を鳴らす。

 元通訳はオンラインで賭けを繰り返していたと報じられている。近年、依存症のリスクを高めているとみられるのがオンライン賭博の広がりだ。スマートフォンやパソコンなどがあれば、時間や場所を問わずに賭けを続けることができ、対面より短期間で依存状態に陥り、高額の経済的損失を発生させる可能性が高いと指摘されている。

 依存症の当事者や家族を支援する公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」によると、新型コロナウイルス禍の前は、国内の依存症の中心は法律上「遊技」とされるパチンコだったが、コロナ禍で在宅時間が増えたことでオンライン賭博へと急速にシフトしたという。同会が昨年中に受けた相談では当事者の低年齢化が進み、20~30代が約8割を占めた。高校生に関する事例もあったという。

 法律で認められている競馬や競輪などの公営ギャンブルもコロナ禍を機にオンライン利用が増えた。さらに、スポーツ賭博を含む違法なオンラインカジノの利用者が急増している。海外で合法的に運営されているカジノのサイトでも、日本から接続して賭博を行えば犯罪だ。ネットの広告などに誘導され、軽い気持ちで始める人が少なくない。20~22年には約300人が逮捕や書類送検されている。

 多重債務問題に取り組む弁護士らでつくる「全国クレサラ・生活再建問題対策協議会」は今月、オンライン賭博への対策強化を求める意見書を政府や都道府県知事宛てに提出した。違法な業者の摘発強化や、公営ギャンブルのオンライン利用について厳格な規制の導入などを求めている。政府や国会は速やかに対策強化の議論を進めるべきだ。

 ギャンブル依存症から立ち直るために重要だったと多くの当事者が語るのが、自助グループや家族会などとつながることである。借金を肩代わりするなどして、問題を家族で抱え込むことは回復を遅らせるとされることも知っておきたい。学校などでの予防教育の充実も急ぎたい。

(2024年05月09日 08時00分 更新)

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