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成り済まし広告 SNS企業の責任大きい

 インスタグラムなどインターネットの交流サイト(SNS)で、著名人の画像を無断利用した成り済まし広告が横行している。架空の投資を勧めて金銭をだまし取る詐欺広告である。掲載しているSNS運営企業の責任は大きく、対策が求められる。

 「稼ぎましょう」「利益が出る運用」。著名投資家や芸能人の顔写真とともに、こうした文言で投資を呼びかけるSNS広告が増えている。茨城県の70歳の女性は投資を勧める広告を見て、経済アナリストの森永卓郎さんをかたる通信アプリLINE(ライン)のアカウントに参加。金の積み立て投資で使うアプリの導入を指示され、計約7億円を振り込むなどした。

 このような「SNS型投資詐欺」が相次いでいるとして、警察庁は初めて2023年の被害状況を集計した。認知件数は全国で2271件、被害額は約277億9千万円に上った。1月の被害額は約8億円だったが、12月は約53億円に急増した=グラフ。1件当たりの平均被害額は1千万円を超えている。

 詐欺の入り口に当たる広告の多くは、インスタグラムやフェイスブックに掲載されていた。いずれも米IT大手メタが運営するSNSである。

 神戸市などの被害者4人は先月、広告の真偽を調査するのを怠ったとして、損害賠償を求めてメタの日本法人を提訴した。また、自身の名前や顔写真を無断で使われている衣料品通販大手ZOZO創業者の前沢友作さんや実業家の堀江貴文さんは先月、自民党の会合に出席して、こうした広告の規制を訴えた。同党はメタに詐欺広告の停止を検討するよう要請した。

 これに対してメタは「オンライン詐欺は社会全体の脅威だ」などとする声明を発表した。詐欺への対策を含めた安全対策に巨額の投資を行っており、広告を審査するチームには日本語に詳しい人員も配置していると説明。一方で、世界中の膨大な数の広告を審査するには課題を伴う、と理解を求めた。

 だが、詐欺広告を社会の問題とするメタの姿勢は責任逃れとも受け取れ、批判の声は強い。広告主から料金を得て掲載している以上、SNSの運営企業は広告の内容を審査して詐欺を排除するのが当然だ。真摯(しんし)に対応しないのであれば、運営企業に詐欺広告の削除を義務付けるといった法規制を検討するべきだろう。

 SNSを利用する側も、こうした広告にだまされないよう注意が欠かせない。SNSで投資を誘われたら、詐欺の可能性を疑った方がよい。

(2024年05月08日 08時00分 更新)

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