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みどりの日 学童保育施設の木造化を

 真新しい建物内に子どもたちの元気な声が響いていた。中山小(岡山市北区)の敷地にある学童保育(放課後児童クラブ)の今春増設された施設だ。木造2階で3クラス分の部屋を確保。従来のプレハブ施設と合わせ156人の子どもを受け入れている。

 岡山市では今春、芳明、平福小(いずれも南区)を含めて3カ所の施設が増えた。市はプレハブで建設していた施設を、2018年度着工以降は木造化しており、計29カ所となった。森林保全を目的に国から自治体に配られる「森林環境譲与税」を財源として活用できるのも利点だ。

 3年前にできた高島小(中区)のクラブは、部屋の柱やはりの木材が垣間見える=写真。プレハブでは夏は暑く、冬は底冷えする。真夏は「エアコンがあっても暑く、タオルを手放せなかった」と指導員が言うが、木造では「冷房がよく効いて快適だ」と喜ぶ。第二福田小(倉敷市)のクラブで8月に測ったデータでは、プレハブの室温が36・8度、木造は25度だった。

 岡山市はもともと、このクラブを視察して木造化を決めた経緯がある。ただ、倉敷市はこのクラブ以外はプレハブだ。市は「予算の折り合いなどがつけば木造もあり得るが、プレハブは工期が短い利点があるし内装に木を施し大きく違わない」としている。

 一方で岡山市は、これまでの施設が「夏は涼しく冬は暖かい」「子どもたちが落ちつく」などと好評で「費用もプレハブと大差がない」として木造化を今後も進めていく考えだ。岡山県内でも自治体によって対応が分かれている。

 ただ、森林保全など国土や地域全体の観点から木造化には別の意義もある。森林は国土や岡山県の面積の7割近くを占め、戦後に植林された木々が成長し、伐採期を迎えている。充実した資源の有効活用は大きな課題だ。

 学童保育施設木造化の運動は愛知県でも始まった。市民団体「森と子ども未来会議」が主導して、木をたっぷり使う伝統工法「板倉造り」で19年以降これまでに愛知、沖縄県に計10棟ができた。会議は、岡山県で木造化を働きかけている県学童保育連絡協議会とも連携し勉強会などを開催。学童保育施設を木材活用の新たな市場とする運動を、全国学童保育連絡協議会などを通じて広げていく意向だ。

 きょうは「みどりの日」。山で出番を待つ木々の活用と、子どもの育ちがうまくマッチできたらいい。

(2024年05月04日 08時00分 更新)

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