山陽新聞デジタル|さんデジ

みどりの窓口削減 乗客目線の改善急がれる

 対面で切符を販売する「みどりの窓口」の削減を進めるJRの旅客各社に対し、利用者の不満が噴出している。数が少なくなった窓口の混雑が激しくなり、「窓口と同等のサービスを提供できる」との触れ込みで設置した券売機の使い勝手も良くないためである。乗客目線に立った改善が急がれる。

 窓口削減は、JRの人手不足やインターネット予約の普及を背景に、新型コロナウイルス禍に伴う乗客の減少も踏まえ、駅業務を効率化する狙いとされる。JR西日本管内では2020年度に約340駅にあったが、30年度末には約100駅に縮小される見通しだ。岡山県内では現在、岡山、高島、北長瀬、大元、倉敷、新倉敷の6駅に残るだけ。県北部にはなくなった。

 とはいえ、団体乗車券や、レンタカーとセットになった特別企画乗車券、長距離を乗り継ぐ複雑な経路の切符など窓口でなければ買えない種類は多い。何より、区間変更や払い戻しでも係員が必要な情報を聞き出し、全て操作をしてくれる安心感が窓口にはあろう。

 各地の窓口はコロナ禍で途絶えていたインバウンド(訪日客)の急回復もあって日常的に混雑し、年末年始や大型連休の繁忙期は長蛇の列ができる。JR西は予約サイトをリニューアルするなどネット販売への誘導策を打ち出すが、全ての人がネットにスムーズに対応できるわけではない。手間をかけず、気軽に乗れる鉄道の良さが失われているとの批判も出ている。

 JR西が窓口の代替として設置を進める「みどりの券売機プラス」への不便を訴える声も多い。最大の理由は待ち時間の長さで、混雑時はオペレーターにつながるまで数十分かかる。後ろに並んでいる人はいつまで待てばよいか分からず、あきらめて立ち去る姿も見受けられる。

 にもかかわらずオペレーター応対時間を6月から短縮し、早朝と深夜帯をなくして午前8時~午後8時とする。利用が多い昼間中心の時間帯に集中して配置すると説明するが、早朝と深夜にも電車は走っており、さらに使いにくくなると言わざるを得ない。

 窓口の削減をJR各社が進める中、JR東日本はいち早く方針転換を発表し削減計画を凍結した。混雑などの苦情件数が無視できない規模にまで膨らんだことを重く受け止めたという。

 JR各社は国鉄改革で1987年に分割民営化して生まれた。サービス向上が期待されたが近年は窓口の問題のほかに減便や無人駅化を推し進め、特急の自由席をなくすなど利用者の戸惑いは大きい。

 地域経済や日々の暮らしを支えるインフラ企業であり、一定のサービス水準は不可欠だ。国が進めた国鉄改革の原点に立ち返り、どうすればサービス向上ができるのか。国も責任を持ち在り方を模索することが求められる。

あなたにおすすめ


さんデジ特集

TOP