山陽新聞デジタル|さんデジ

『his』 多様化の時代を象徴するラブストーリー

(C)2020映画「his」製作委員会
(C)2020映画「his」製作委員会
 『愛がなんだ』が公開されたのは昨年の4月だった。それからまだ9カ月なのに、本作を含め3本が公開に。すっかり“恋愛映画の旗手”という名声を確立させた今泉力哉だが、恋愛は恋愛でも今回は男同士。多様性が叫ばれる時代を象徴するような社会派のラブストーリーだ。

 ゲイであることを隠して田舎で自給自足の生活を送る迅の元に、8年前に別れた元恋人・渚が突然現れる。彼は妻と離婚調停中で、6歳の娘を連れて押し掛けてきたのだった…。映画業界にはカミングアウトしている同性愛者も少なくないため、迅の保守的な考え方に今更感を覚えてしまった。例えば2月に日本公開されるイギリス映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』の場合、舞台を旧態依然としたユダヤ教のコミュニティーに設定することで、このテーマにどうにか説得力を持たせている。でも、日本ではまだこれが一般レベルでの実情なのだろう。

 ただし、企画自体はメ~テレ(名古屋テレビ)と脚本家のアサダアツシ。監督に話を戻すと、恋愛映画では恋愛感情や性癖よりもむしろ、二人の関係性の方が物語の駆動力となる。今泉監督は、そこに別の人物を絡ませて関係性やその変化を際立たせる手腕に長けている。今回でいえば、渚の娘(子役の演技指導もうまい!)や迅に片思いする役場の女性職員である。特に、彼のように会話をきちんと映画として見せられる監督は少なく“恋愛映画の旗手”と称されるのも納得である。★★★★☆(外山真也)
監督:今泉力哉
企画・脚本:アサダアツシ
出演:宮沢氷魚、藤原季節
1月24日(金)から全国公開

(2020年01月21日 08時08分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ