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津山出身オダギリ監督が長編映画 “人間らしい生き方”問う

オダギリ監督
オダギリ監督
映画「ある船頭の話」=(C)2019「ある船頭の話」製作委員会
映画「ある船頭の話」=(C)2019「ある船頭の話」製作委員会
 独自の世界観を築き上げる俳優オダギリジョー(津山市出身)の初の長編監督作「ある船頭の話」が、シネマ・クレール丸の内(岡山市北区丸の内)で上映されている。明治と大正のはざま、時代の移り変わりに直面した山あいの村を舞台に、渡し船の船頭の姿を通して“人間らしい生き方とは何か”を問う。舞台あいさつで来岡したオダギリは「日本の美しい景観や伝統文化が消えゆく寂しさを感じている」と語った。

 川面に浮かぶ小舟。年老いた船頭トイチ(柄本明)は、猟師や医者、芸妓、商人らさまざまな人たちを乗せては、岸から岸へと渡す。近くでは近代的な橋の建設が進み、仕事を失うことは明らか。複雑な思いを抱きながらも、静かに、黙々とこぎ続ける。

 10年ほど前、番組で目にした熊本県球磨(くま)川の船頭が心に残り、会いに行って2週間ほど生活を共にした。カメラで追ううちに「こういう美しい文化や存在が消えていくのはもったいない」と思ったのが製作の始まりという。

 米国への留学経験があるオダギリは、海外から見たことで日本の良さを多く感じるようにもなった。「船頭もそうだが、伝統工芸や古い建物であったり、世の中が便利になればなるほど、そういうものが軽視されていく。日本は良き文化をあっさり手放している気がする」

 作品では名匠クリストファー・ドイルを撮影監督に起用し、季節で表情を変える川面や緑濃い山々など、日本の原風景ともいえる自然美を紡ぎ出す。柄本をはじめ橋爪功、浅野忠信、永瀬正敏、蒼井優ら数々の名優の好演、神狐(しんこ)のような存在との対話といった幻想的な演出もあり、出品したベネチア国際映画祭で高い評価を得た。

 実は高校まで津山で過ごしたオダギリにとって、今回の舞台は「身近だった吉井川をどこかでイメージしていた」。過去には中編映画「さくらな人たち」(2009年)や、自ら脚本・監督したドラマ「帰ってきた時効警察」第8話(07年)の中で桜を意識的に用いたこともあり、「津山城の桜など、子どもの頃の記憶がこぼれ出た」と振り返る。

 デビュー後は古里から遠ざかり、「思い出深い」という津山の映画館は、今では一つも残っていない。街の映画館が追いやられ、大規模なシネコンが主流となっていく風潮を、映画の物語に重ねて憂うが、それでも「自分の作品を岡山で公開してもらえてうれしい。できれば津山でも上映や舞台あいさつをしたい」と話した。

 シネマ・クレールの上映は31日まで。

 オダギリジョー 1976年生まれ。作陽高卒業後、映画関係の仕事を志して米カリフォルニア州立大フレズノ校に留学し演劇を専攻。2003年公開の「アカルイミライ」で映画初主演し、以降は映画を中心にドラマやCM、海外作品にも多数出演する。今年のベネチア国際映画祭では監督作と出演作「サタデー・フィクション」が同時に出品され、日本人初の快挙となった。代表作は「ゆれる」「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」「エルネスト」など。

(2019年10月26日 16時41分 更新)

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