山陽新聞デジタル|さんデジ

『バースデー・ワンダーランド』 内気な少女が異世界で繰り広げる大冒険

(C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会
(C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会
 『河童のクゥと夏休み』『カラフル』などで国際的にも評価の高いアニメ作家・原恵一の新作だ。柏葉幸子の児童小説を原作に、内気な少女が救世主として連れてこられた異世界で大冒険を繰り広げる。よくある『不思議の国のアリス』の変奏だが、『千と千尋の神隠し』がそうだったように一流の才能の手に掛かるとオリジナリティーあふれる世界観に生まれ変わる。

 原恵一作品の特徴といえば、きめ細かな日常描写と登場人物の心情を丁寧にすくい取る語り口にある。今回も、アニメなのにあえて被写界深度の浅い画面を作って細かくピントを送るなど、実写映画を意識したリアリティーへのこだわりは健在。その一方で異世界が舞台の本作は、これまで以上に冒険やファンタジーの要素が強い。

 キャラクターデザイナーが毎回違う彼の作品の場合、作家性を特徴づける決まった絵面がない上、登場人物が特定の俳優の顔を持たないアニメならではの利点を生かして、常に観客が感情移入しやすい世界観を構築してきた。そして、その中に小さなファンタジーをまぶすのが持ち味だったわけだが、今回のファンタジーは大きい。躍動感やダイナミズムよりも叙情性を重視する彼のスタンスは、小さいファンタジーだったから生きていたのに…。それでも、叙情性と随所でクスッとさせる小ネタの緩急など細部の魅力はさすがで、誰にもマネできない“原恵一版『不思議の国のアリス』”に仕上がっている。★★★★☆(外山真也)
監督:原恵一
声の出演:松岡茉優、杏、麻生久美子、市村正親
4月26日(金)から全国公開

(2019年04月23日 08時09分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ