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2018岡山映画大放談 今年のベスト映画は?

今年の映画を振り返る(左から)世良さん、江見局次長、吉富さん
今年の映画を振り返る(左から)世良さん、江見局次長、吉富さん
 2018年もあとわずか。今年も映画館のスクリーンを数々の名作が彩った。そこで、映画史研究家の世良利和さん、シネマ・コレクターズ・ショップ「映画の冒険」店主の吉富真一さん、山陽新聞夕刊「映画漫談 シネじいひとり旅」執筆者の江見肇編集局次長の映画愛好者3人に集まってもらい、岡山市内の居酒屋で「年末大放談会」を開催。山陽新聞デジタル(さんデジ)スタッフも参加して1年を振り返った。(12月26日付山陽新聞夕刊「映画漫談 シネじいひとり旅」の詳報版)

 やはり「スター・ウォーズ」かい! 外国映画

 江見 大放談会も2年目となると、みなさん要領分かっていますよね。まずは外国映画のベストワンを挙げていきましょう。「シェイプ・オブ・ウォーター」(ギレルモ・デル・トロ監督)は面白かった。3月公開で、もう記憶が薄れてきていますが。

 世良 アマゾンの奥地で捕らえてきたという謎の半魚人と人間のロマンスを描いた作品だけれど。僕、半魚人が好きなんで。あのフォルムがいい。

 さんデジA 私のベストワンはこれかな。今まで見たことのない映画だという意味でね。ただ、半魚人の全身が出てくるのが早いわ。

 江見 それに障害者、同性愛者、黒人といった多様性を受容する立場から描いた「反トランプ的映画」だ。

 世良 僕の中では「シェイプ・オブ・ウォーター」も捨てがたいけれど、「レディ・プレイヤー1」(スティーブン・スピルバーグ監督)だな。映画をつくることよりもあそこまで版権を獲得する情熱がすごい!

 江見 仮想現実の世界にいろんな作品が出てきたものね。「シャイニング」とか「キングコング」とか。

 さんデジA 大友克洋の「AKIRA」に出てくる金田バイクが出てきたのに感動!

 江見 スピルバーグ監督といえば、僕は商売柄、「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」がベスト。記者の原点に立ち戻された。これも「反トランプ的映画」だね。主演のメリル・ストリープは嫌いだけど、報道の自由を守る決断をするワシントン・ポスト紙の社主の役はよかった。スピルバーグもやっぱりうまい。

 さんデジA メリルはねえ。同感だけど。

 江見 「スリー・ビルボード」(マーティン・マクドナー監督)もよかった。娘を失った母親の主人公をオスカー女優のフランシス・マクドーマンドが演じるなど、キャストがすごい。放火シーンとかも迫力があったなあ。

 さんデジB これだけおじさんがそろっているんだから、「ボヘミアン・ラプソディ」(ブライアン・シンガー監督)はみんな見てますよね。

 世良 まだ見てない。

 一同 まさか!

 吉富 あの頃の世代で言うと、RSKラジオ番組「サンデーベスト」を聴いていない人には刺さらないよな。

 さんデジA 1975年のクイーンの岡山公演よくやったよな。多くの日本人の心に刺さっちゃった。ちなみに僕はクイーンよりKISSの方が好きだけど。

 さんデジB 「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」(ロン・ハワード監督)は?

 全員 見た!!

 吉富 僕はハン・ソロの若き日を描いた「ハン・ソロ」推し。ファンにはあまり評判がよくないけれど、ロン・ハワードファンとして思い入れがあるので。この監督もやはりうまい。スター・ウォーズを知らない人でも楽しめるからね。

 江見 そうです。あれは西部劇ですよ! 結局、みんな「スター・ウォーズ」が好きなんかい! 何なんですかね、これ。

 さんデジB 私は韓国映画の「タクシー運転手 約束は海を越えて」(チャン・フン監督)。光州事件を取材したドイツ人記者と彼を乗せたタクシー運転手の実話を基にした映画。主演のソン・ガンホ半端ない。軍事政権の権力と市井の人々の闘いを描いた「1987、ある闘いの真実」(チャン・ジュナン監督)もそうですが、今年の韓国映画はジャーナリズムを扱った良作が相次ぎました。自国の歴史の重苦しいテーマをエンターテインメントに昇華できる韓国映画のパワーに脱帽です。

 「万引き」「カメ止め」を斬る! 邦画

 さんデジB カンヌ映画祭グランプリに輝いた「万引き家族」(是枝裕和監督)はさすがにみんな見てますよね?

 吉富 見てない。

 一同 はぁ!?

 吉富 「万引き家族」だけど、是枝監督はちょっと苦手なんです。「奇跡」は好きだけど。ブームが落ち着いたら見ようと思ったら終わっちゃった(笑)。

 さんデジA 私の邦画ベストワンはこれ。

 世良 僕は「万引き家族」は買っていない。なんかね、樹木希林にリリー・フランキーに安藤サクラ。出すぎでしょ。柄本明まで出ているんだから。あと柄本佑がいたら現在の日本オールスター映画だよ。

 さんデジB 「万引き家族」では松岡茉優がいいですよね。今年大活躍した女優。お次は話題になった「カメラを止めるな!」は、さすがに全員見てる?

 さんデジA 見てないよ。

 吉富 僕もシナリオだけ読んだら、ネタ分かっちゃって(笑)。

 さんデジA 見に行かなくちゃいけない雰囲気になると、なんだか反発してしまった。

 世良 僕は2回見た。最初は出ていた人たちに目が行かなかったので、何を演じたのか見たかった。

 さんデジB 一通り見たら前半の伏線の意味が分かるので、もう一度確認したいというリピーターは多かったようですね。

 江見 映画館の観客全体がどっと笑ったという経験は、中学生の時見た76年の「ピンク・パンサー3」以来。あの一体感がいい。

 世良 ゾンビ映画の前半とネタばらしの後半の2部構成なんだけれど、前半のエンドロールで帰ったやつが結構いたのは信じられなかったけどね。面白かったし、映画愛がつまっているけれど、冷静に見たらそんなにすごい映画かな、と。

 江見 次の笑いは何? 次の笑いは?と期待で前のめりにさせる笑いのパワーがあったけどね。

 吉富 次の作品が試される。

 江見 世良さんの邦画1位は?

 世良 えこひいきで三宅唱監督の「きみの鳥はうたえる」。原作者の佐藤泰志に思い入れがあって。私がやっていた同人誌に「海炭市叙景」を書いてもらったんだ。

 さんデジB 私も佐藤泰志原作ということで見に行きました。石橋静河がよかったし、函館の街を映した映像がきれいだった。石橋は、水谷豊の娘の趣里が主演して高評価だった「生きてるだけで、愛。」にも出ていたな。

 吉富 1960年代の若松孝二監督プロダクションの人たちの青春を魅力的に描いた「止められるか、俺たちを」(白石和彌監督)と迷ったけど、「体操しようよ」(菊地健雄監督)がベスト。父親と娘、ラジオ体操がテーマの良質な作品に仕上がっていて、僕好みでした。誰も見ていないので、あえて挙げてみました。DVD出たら見てね。

 さんデジB 私は瀬々敬久監督の「菊とギロチン」。大正アナーキスト集団の若者たちと、社会で厳しい扱いを受けた女相撲に挑む女たちが出会ったらというぶっ飛んだ設定もさることながら、上映時間3時間9分。腰が砕けそうになった。瀬々監督がやりたいことをやり遂げたって感じの映画。スケールがすごい。

 吉富 頻尿のおじさんには大変な映画だね。朝からコーヒーも飲まずに万全の態勢で見たよ。

 さんデジB だいたい最近の映画は2時間超えがザラで、長いんですよ。膀胱(ぼうこう)が持たない(笑)。

 江見 今年は瀬々監督の作品としては「友罪」もあったしね。僕は悩むけれど、「モリのいる場所」(沖田修一監督)をプッシュ。超俗の実在の画家熊谷守一を主人公に庭だけであんなに大きな世界が広がる映画ができるのかと。たくまざるユーモアもいい。ほとんど茶室だけで展開した「日日是好日」(大森立嗣監督)も似たところがあった。どちらも小品だったけど、味わい深くて好きだった。

 世良 広瀬すずファンの江見さんは、すずちゃん推さないの?

 江見 広瀬すず主演では、「ちはやふる 結び」(小泉徳宏監督)。あと、すずちゃんは出ていないけれど、浅口市出身の中田秀夫監督と知らずに見た「スマホを落としただけなのに」の面白さにはうなった。中田監督作品はほかにコメディーの「終わった人」も楽しめた。ホラーで有名だったけど、確実に作品世界が広がっているね。

 世良 広島のやくざと刑事を描いた「孤狼の血」(白石和彌監督)は評判が良かったけれど。主演の役所広司が、どう見ても根っからの善人顔で物足りない。松坂桃李はよかったね。薬局の女の子を演じた阿部純子もよかった。

 吉富 ああいうご当地ロケはいいよね。

 さんデジB でも、地元の中国新聞社の暴力団担当記者だった知人が言っていたけれど、警察署や新聞社のディテールが違っていて、地元民としては違和感が強かったと嘆いていましたよ。

 江見 「素敵なダイナマイトスキャンダル」(冨永昌敬監督)は? 母親がダイナマイト心中を図ったという強烈な体験を持つ雑誌編集者の自伝的エッセイの映画化だけど。

 世良 あれはいい。本当にくだらないけれど。山陽新聞の記事にもなった岡山の猟奇事件なんだから、現地ロケしてほしかったな。あれはゴダールの「気狂いピエロ」よりはるか上ですよ。ダイナマイトで肉片が飛び散るんだから。

 吉富 僕は前からすごいいいって騒いでいたけれど。

 「マンハント」の年だった! 岡山ロケ

 さんデジA ジョン・ウー監督が蒜山など岡山でロケした「マンハント」は?

 全員 見た!

 さんデジA 最初の居酒屋で女殺し屋が派手に銃撃するところがすごい。

 江見 むちゃくちゃな設定だよね。

 世良 偏見なのかもしれないけど、その場面の映像が日本に見えないんだ。何か違う。

 さんデジA 製薬会社のパーティーでみんなが踊る、盆踊りとオタ芸をミックスした踊りが変。

 吉富 日本人の美術監督なのに中途半端。ジョン・ウーに意見言えなかったのか。「キル・ビル」の時の日本のセットは納得できたが。

 世良 そういったずれも面白いんじゃないかな。それにアクション俳優の倉田保昭が意外な役で出ていた。

 さんデジA ふだん見たことのない蒜山の風景。観光地じゃないところで撮っている。

 世良 福山雅治とチャン・ハンユーが手錠をかけたままのアクションをもう少し見たかったな。

 吉富 ガンファイトはかっこいいのに。田舎道のカーチェイスはいまいち。

 江見 それでもジョン・ウー監督が岡山で撮るなんて信じられない。

 世良 でも、女殺し屋役で出演した監督の娘(アンジェルス・ウー)がねえ。

 吉富 娘のアクションはよかったよ。二丁拳銃で。往年のジョン・ウーの作風がにじんでいる。でも、岡山の「お」の字も出ないのが残念!

 江見 岡山ロケでいえばあと、岡山市出身の桜井日奈子と人気アイドルグループ「King&Prince」の平野紫耀が主演した「ういらぶ。」があるけれど…。

 世良 少女漫画原作だけに、おじさんとしては心の準備が必要。

 さんデジB 内容よりも平野紫耀見たさの映画ですね。11月に岡山で舞台挨拶がありましたが、TOHOシネマズ岡南では、出待ちで約150人が建物を取り囲んだそうです。

 江見 仕事上必要に迫られて見た僕以外は見てないと思うけれど、中身はちょっと。それはそうと、11月に行われた岡山映画祭はどうだった?

 吉富 僕は「いぬむこいり」(片嶋一貴監督)の上映を担当しました。犬と人間の女性が夫婦として生活をする伝承民話から着想を得た映画で、4時間5分の大作。片嶋監督や主演の有森也実さんをゲストに迎えて、大いに盛り上がった企画でした。

 世良 そんな長編でトイレは大丈夫?

 吉富 途中で休憩入れたからね。

 世良 岡山ロケの話に戻ると、犬島を舞台にした「喜びの劇〜煙突のある島で〜」(山崎樹一郎監督)があるね。沖縄でも岡山でも見た。でも、あれは長ーい予告編といった感じでそのまま終わっちゃった。

 吉富 島の家族の温かさとひと夏の少年の成長物語ですね。僕は大いに評価していますよ。

 江見 来年公開の「みとりし」(白羽弥仁監督)は高梁ロケ。余命わずかの人に寄り添って死の不安を取り除く看取り士を題材にした映画ですね。

 吉富 夭折の俳人・住宅顕信を描く「ずぶぬれて犬ころ」(本田孝義監督)も全編岡山ロケ。岡山でも5月上映予定。

 世良 来年は岡山ロケものが楽しみだな。

 本命は後からやってきた! アニメ

 世良 アニメはどう? 夏の本命として期待されていた細田守監督の「未来のミライ」は、どうしましょう。うーん、なんともね。

 江見 ストーリーや設定が普通すぎるんですかね。

 世良 前半は期待できたのだが、後半あたりから無理やり感があった。

 さんデジB 4歳の子どもが主人公では、感情移入できなかったですよ。細田監督が大切にしている「家族」というテーマは伝わるけれど、文科省推薦っぽい。細田監督にはやはり、「時をかける少女」「サマーウォーズ」みたいに、青春の胸キュン設定で頼みます。

 江見 「ペンギン・ハイウェイ」(石田祐康監督)は?

 さんデジB 本命を失った夏休みアニメの中で目を引きましたね。原作は人気の作家森見登美彦の同名小説。主人公の小学生が、お姉さんのおっぱいに夢中という設定で、作品の中で「おっぱい」という言葉が何度も出てくるんだけれど、それがおかしい。

 吉富 おっぱいが出てくる映画?

 さんデジB さすがに出ません。

 江見 やはり、アニメ部門は9月に封切られた「若おかみは小学生!」(高坂希太郎監督)だな。両親を亡くし、祖母の温泉旅館で暮らすことになった小学生の女の子が、周囲に助けられながらお客様をもてなすために奮闘する物語。ハンカチなしには見られない!

 吉富 あれは感動した。十分大人向けの作品なのに、プロモーションの子供向けの絵柄で損をしたような感じがするね。

 さんデジB 今年の大本命ですね。スタジオジブリの作画監督として知られた高坂監督に加え、脚本は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「ガールズ&パンツァー」など深夜アニメでヒット作を連発する吉田玲子。劇場に行ったら子連れはほとんどいなくて、おっさんが大勢、目頭おさえていた。すごい光景でした。

 世良 吉田玲子か。じゃあ、面白いだろうね。

 さんデジB あと、岡山では公開がなかったけれど日中合同アニメ「詩季織々」。「君の名は。」で知られる新海誠監督をリスペクトする日本・中国の3人の若手クリエイターが監督を務めたオムニバス形式。いまや中国の人材なしに日本のアニメができない中で、成長していく中国アニメの実力を見た印象です。新海監督の初期作品「秒速5センチメートル」を観ているような切なく優しい青春アンソロジーで、お勧めですね。

 江見 劇場版アニメ三部作の「GODZILLA(ゴジラ)」(静野孔文・瀬下寛之監督)は今年完結したけれど?

 さんデジB 2作目を見て離脱しました。あまりにもストーリーを引っ張りすぎ。三部作ありきみたいな展開が嫌になって。

 江見 1作目はゴジラのせいで地球を脱出して宇宙を漂流する人類っていう設定が新鮮で、よかったんだけどな。

 吉富 アニメじゃないけれど、来年公開のハリウッド版ゴジラは期待大。予告編で見る限り、ゴジラが50メートルでキングギドラが120メートルという昔の怪獣図鑑の公式サイズを踏襲したバランスになっているところがうれしいね。

 愛がありあまって… 残念な作品

 世良 蛇足だが、今年見たワーストは? 期待外れだったり、今一歩だったりした映画を挙げていこう。僕は「ハナレイ・ベイ」(松永大司監督)。吉田羊主演映画だけど、厳しい。村上春樹作品の映画化はどれもぱっとしないね。さっきも話したけれど、佐藤泰志の小説の方が映画化したらどれもいい。佐藤泰志はもう他界したけれど、これからも読まれるのは佐藤の方じゃないかと思えてくるんだ。

 さんデジA 「マンハント」。最初のアクションはよかったけど、あとは中途半端。大阪府警の連中が関西弁を話していない。

 世良 英語はペラペラだったけど。

 江見 「孤狼の血」。悪くはないけど、世良さんが言うように役所広司がミスキャストな気がする。「羊の木」も吉田大八監督なのに、あれれって感じで。期待が大きすぎてね。

 吉富 やっぱり「マンハント」。最初のダンスの場面からね。間の抜けたダンスシーンの俯瞰がもう耐えられん。

 江見 やはり、「マンハント」は岡山ロケだけに、みなさん郷土愛がありあまってシビアですね。

 さんデジB 「ビブリア古書堂の事件手帖」(三島有紀子監督)。原作小説の大ファンなのですが、主人公の古書店の女店主は、古書のことなら何でも知っている頭脳明晰で、黒髪でスタイル抜群の美人。そんなの演じられる芸能人いないじゃないですか。テレビドラマ化した時、剛力彩芽が演じて原作ファンから大ブーイングを浴びたし、それで映画は黒木華。

 吉富 僕、黒木華好きだけどな。

 江見 僕も好き!…と、あれこれ言っている間に次第に記憶が戻ってきたんだけど、洋画で「デトロイト」(キャスリン・ビグロー監督)を忘れていませんか?

 一同 あーっ!!

 江見 おっさんは忘れやすいので、来年は半年ごとに回顧しましょうか。

 全員 おー!

(2018年12月26日 03時00分 更新)

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