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“人生のしまい方”明るく映画に 脚本の平松恵美子(倉敷出身)

「映画は心に栄養を与えてくれる。コロナで大変な時期ではあるが、ぜひ触れてほしい」と語る平松
「映画は心に栄養を与えてくれる。コロナで大変な時期ではあるが、ぜひ触れてほしい」と語る平松
 地方都市の在宅医療専門診療所を舞台に、自分らしい“人生のしまい方”について問う映画「いのちの停車場」(成島出監督)。現役医師が手掛けた小説を基に、老老介護や終末期医療といった重いテーマに切り込んだ話題作だ。脚本を担った倉敷市出身の映画監督・脚本家平松恵美子(54)は、自身の体験などから「リアルな医療現場が題材とはいえ、どこか柔らかで明るい雰囲気にしたかった」と思いを語った。

 主人公の白石咲和子(吉永小百合)は東京の救命救急センターで幾多の命を救ってきた医師だが、ある出来事をきっかけに、故郷金沢の「まほろば診療所」で在宅医として再出発する。必要とされるのは必ずしも医療行為だけではないという現実に戸惑いつつ、死期が近づく患者とその家族に寄り添っていく。吉永が映画出演122本目にして、初めて医師役を演じたことでも注目を集めた。

 原作は医師で作家の南杏子の同名小説。診療所内の温かな交流が描かれる一方、安楽死などの社会問題に深く向き合っており、「細部まで迫真性が追求され、センセーショナルな内容に驚いた」のが第一印象だ。作中で咲和子はさまざまな人の死に遭遇するが、「私の使命は決してこの作品を暗くせず、要所要所で明るく描くことだった」と明かす。

 自身の母が今まさに在宅ケアを受けているという平松。医師をはじめ看護師、介護士ら医療関係者は、大変な仕事にも関わらず、皆が明るく振る舞い、患者に安心感を与えていることに感銘を受けた。「逆にそういう心持ちがないと続けられない仕事なのかもしれない」

 そんな医師役に「ぴったり」という吉永から、平松は深い信頼を得ている。これまでに「母べえ」(2008年)「おとうと」(10年)「母と暮せば」(15年)で脚本を務め、今回も吉永の推薦だった。「吉永さんは非常に熱心。聴診器などの小道具を自宅に持ち帰ってまで徹底的に役作りをし、脚本の執筆中にもさまざまな意見をいただき助けられた」と振り返る。

 作品では吉永をはじめ、西田敏行、田中泯らが円熟味を発揮する一方、訪問看護師役の広瀬すず、咲和子を追って診療所の一員となった松坂桃李のみずみずしい演技も見どころの一つ。「若手は吉永さんのひた向きで真面目な人柄に影響を受けつつ、爽やかな風が吹き抜けるような心地よい演技が素晴らしかった」と絶賛する。

 くしくも新型コロナウイルスが猛威を振るう中での撮影、公開となった今作。「若い人を含め、誰もが命について深く考える機会になっている。作品を通して『いのち』とは何だろう、どう向き合えばいいのか、少し立ち止まって考えてもらえれば」

 岡山メルパ、イオンシネマ岡山、TOHOシネマズ岡南、MOVIX倉敷などで上映中。

(2021年06月05日 15時36分 更新)

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