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<ドキュメンタリー映画3選>『プリズン・サークル』罪と向き合い、自分自身と向き合う受刑者たち

 (C)2019 Kaori Sakagami
 (C)2019 Kaori Sakagami
 本作を撮影した坂上香監督は、これまでNHKや民放のドキュメンタリー番組で放映される社会派ドキュメンタリーを製作し、本作でもテーマになっている治療共同体やドラッグコートなど海外で行われている暴力からの回復を撮ってきた気鋭の監督。2001年のNHK番組改変問題をきっかけにテレビ業界をさり、2004年にはアメリカの粗暴犯の更生プログラムをとらえた『Lifers ライファーズ 終身刑を超えて』を発表しました。

 この作品は、そんな米国で実践されている更生プログラムで受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促す「TC(Therapeutic Community=回復共同体)」を導入している官民協働による新しい刑務所であり、日本で唯一の刑務所でもある「島根あさひ社会復帰促進センター」を取材したもの。フォーカスされるのは、窃盗や強盗致傷、傷害致死などで服役している若者4人。彼らは、ロールプレイングや、自己分析で自分たちが犯した罪の重さと向き合っていきます。彼らが自分の過去と向き合い、自分の生い立ちとも向き合うプロセスで見えてくるのは、彼らもまた、親の愛情を受けていなかったり、暴力で支配をされていた被害者でもあるということ。かつて傷ついた自分と向き合うことで、彼らは、傷つけた人たちへの罪の大きさを感じていきます。

 私たちがニュースで聞くのは彼らが犯した罪だけです。そんな罪に対して、勝手にコメントだけを言ってしまいがちですが、この映画を観ると、その罪にたどり着くまでの根本を私たちもまた一緒に考えていくべきなのではと考えさせられました。ある受刑者が綴る「少年の物語」は、心を打たれる。そしてただ罰するだけではなく、このプロセスが日本中の刑務所で導入されることで再犯率の減少を期待している自分がいました。(森田真帆)★★★★★
監督:坂上香
仮設の映画館にて配信中
https://www.temporary-cinema.jp

(2020年06月02日 07時08分 更新)

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