誰もが参加 「ゆるスポ」普及を 豊かな生活と健康寿命の延伸を図る
昨年のサッカーワールドカップに始まり、年明けには津山市の作陽高校女子サッカー部が全日本女子サッカー選手権大会で3位入賞を果たし、岡山学芸館高等学校のサッカー部が全国高校サッカー選手権大会で初優勝するなど、サッカーにより県民は大いに盛り上がった。
昨年、サッカーワールドカップに合わせて、高齢者施設において「棒サッカー」を楽しむ高齢者の姿がTVにて放映された。多くの高齢者が実に楽しそうに軽く柔らかい「棒」を振る姿が印象的であり、座ってプレーをしているとは思えないような動きに圧倒された。
「棒サッカー」は、11名のメンバーが細長いコートを挟んで、椅子に座り横一列に並び、自チームのゴールを目指してコート内のボールを棒で打ち合い得点を競うレクリエーションである。コートは幅90cm、横12m、高さ40cmの長方形で、フィールド上には人工芝を貼り、ボールが飛び出さないよう低いパネルで取り囲んである。コートの両端には縦45cm、横90cm、高さ30cmのゴールが設けられる。
外側に一列に座ったメンバーは、それぞれのゴール方向に向かってクッション材を巻いた長さ60cmの棒を用いて、コート上にあるボールを相手ゴールに押し込めば得点となる。座って行えるので、要支援・要介護者でも行えるらしい。さらには、このスポーツは、大阪府豊中市にある豊泉家ヘルスケアグループが、高齢者でもできる生涯スポーツとして考案し、2013年には、一般社団法人 日本棒サッカー協会を立ち上げ、研究・普及活動を行っているというから素晴らしい。当該協会のホームページを拝見すると、世界中に普及されていることがわかる。
「棒サッカー」に代表されるように、近年は、年齢や国籍、障がいの有無に関わらず、皆が一緒に楽しむことができる「ユニバーサルスポーツ」が盛んだ。
2020東京パラリンピックで、日本チームが大活躍した「ボッチャ」もその一つである。2チームに分かれて、目標となる白いボール(ジャックボール)に、いかに自チームのボールを近づけるかを競うシンプルなゲームである。両チームは、赤・青のそれぞれ6球ずつのボールを、投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、ジャックボールに近づける。
そもそも「ボッチャ」は、ヨーロッパで、重度脳性麻痺者、四肢重度機能障がい者のために考案されたスポーツであるが、ルールがシンプルで、ボールもお手玉のように柔軟性があり、身体的負担が少なく、安全性も確保されている。年齢・性別・障害の有無にかかわらず行え、知的な戦略や技術・集中力も必要となることが夢中になる理由でもある。
「ユニバーサルスポーツ」以外にも「バリアフリースポーツ」や「アダプテッドスポーツ」として、誰もが参加しやすいスポーツは多くある。これらは「レクリエーション・スポーツ」として実は以前から楽しまれている。「グランドゴルフ」「ゲートボール」「吹き矢」「ウォーキングサッカー」等は聞き覚えがあるだろうが、「ローリングバレーボール」「モッチャ」「卓球バレー」等は、なかなか目に触れることがないかもしれない。勝敗にこだわらず、身体への負担度も低く、レクリエーションの一環として気軽に楽しむことができるスポーツである。
企業の社員研修や、新チーム結成にあたり初めて集うメンバー同士の緊張をほぐすために用いるアイスブレイクや、コミュニケーションを円滑に行うために行われる「イニシアティブゲーム」なども有効な「レクリエーション・スポーツ」の一環であるから、春の新入社員研修や新チームの結成にあたって、ぜひとも取り入れていただきたい。
また、「世界ゆるスポーツ協会」が考案しているスポーツも面白い。足が遅くても体力に自信のない方でも誰もが楽しめるスポーツを目標に考案されている。「500歩サッカー」「ベビーバスケ」「ハンドソープボール」などタイトルだけでも興味を引く。
競技スポーツは、感動や興奮を喚起し、人々を元気にするが、誰もが実体験するとなると厳しい。高齢化、多様化の進む社会では改めて「レクリエーション・スポーツ」を見直す必要がある。さらに、いつでも誰もが気軽に参加できるようにするためには、情報発信も工夫が必要である。
3月には岡山県スポーツ協会が主催する「岡山スポーツフェスティバル」が3年ぶりに開催されるようだ。広島県や兵庫県に比べても、圧倒的に平地の多い岡山市であるから「バリアフリー特区」として、競技スポーツのみならず、誰もが気軽に参加可能なこれらのスポーツも紹介されると楽しいだろう。
◇
三浦 孝仁 みうら・こうじ Ph.D. IPU環太平洋大学・体育学部長・スポーツ科学センター長。岡山大名誉教授。岡山市スポーツ推進審議会会長。公益財団法人岡山県スポーツ協会スポーツ医・科学委員会委員。一般財団法人岡山市スポーツ協会常務理事・スポーツ振興委員会・委員長。一般社団法人大学スポーツ協会デュアルキャリア委員会研修部会委員。岡山大在職中に顧問を務めた同大ウェイトトレーニング部は10度の全国制覇を果たし、ハンドボール部は過去最下位から1部上位へ引き上げるなど、長年に渡りスポーツの教育・指導・研究やキャリア教育などに携わった。障がい者ダイビング指導2団体の役員も務めている。著書に「大学生のためのキャリアデザイン」(かもがわ出版)、「筋トレっち 走れるカラダの育て方」(東邦出版)、「日本の障がい者ダイビング」(編集工房ソシエタス)など。早稲田大卒、日本体育大大学院 修了。1957年生まれ。
昨年、サッカーワールドカップに合わせて、高齢者施設において「棒サッカー」を楽しむ高齢者の姿がTVにて放映された。多くの高齢者が実に楽しそうに軽く柔らかい「棒」を振る姿が印象的であり、座ってプレーをしているとは思えないような動きに圧倒された。
「棒サッカー」は、11名のメンバーが細長いコートを挟んで、椅子に座り横一列に並び、自チームのゴールを目指してコート内のボールを棒で打ち合い得点を競うレクリエーションである。コートは幅90cm、横12m、高さ40cmの長方形で、フィールド上には人工芝を貼り、ボールが飛び出さないよう低いパネルで取り囲んである。コートの両端には縦45cm、横90cm、高さ30cmのゴールが設けられる。
外側に一列に座ったメンバーは、それぞれのゴール方向に向かってクッション材を巻いた長さ60cmの棒を用いて、コート上にあるボールを相手ゴールに押し込めば得点となる。座って行えるので、要支援・要介護者でも行えるらしい。さらには、このスポーツは、大阪府豊中市にある豊泉家ヘルスケアグループが、高齢者でもできる生涯スポーツとして考案し、2013年には、一般社団法人 日本棒サッカー協会を立ち上げ、研究・普及活動を行っているというから素晴らしい。当該協会のホームページを拝見すると、世界中に普及されていることがわかる。
「棒サッカー」に代表されるように、近年は、年齢や国籍、障がいの有無に関わらず、皆が一緒に楽しむことができる「ユニバーサルスポーツ」が盛んだ。
2020東京パラリンピックで、日本チームが大活躍した「ボッチャ」もその一つである。2チームに分かれて、目標となる白いボール(ジャックボール)に、いかに自チームのボールを近づけるかを競うシンプルなゲームである。両チームは、赤・青のそれぞれ6球ずつのボールを、投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、ジャックボールに近づける。
そもそも「ボッチャ」は、ヨーロッパで、重度脳性麻痺者、四肢重度機能障がい者のために考案されたスポーツであるが、ルールがシンプルで、ボールもお手玉のように柔軟性があり、身体的負担が少なく、安全性も確保されている。年齢・性別・障害の有無にかかわらず行え、知的な戦略や技術・集中力も必要となることが夢中になる理由でもある。
「ユニバーサルスポーツ」以外にも「バリアフリースポーツ」や「アダプテッドスポーツ」として、誰もが参加しやすいスポーツは多くある。これらは「レクリエーション・スポーツ」として実は以前から楽しまれている。「グランドゴルフ」「ゲートボール」「吹き矢」「ウォーキングサッカー」等は聞き覚えがあるだろうが、「ローリングバレーボール」「モッチャ」「卓球バレー」等は、なかなか目に触れることがないかもしれない。勝敗にこだわらず、身体への負担度も低く、レクリエーションの一環として気軽に楽しむことができるスポーツである。
企業の社員研修や、新チーム結成にあたり初めて集うメンバー同士の緊張をほぐすために用いるアイスブレイクや、コミュニケーションを円滑に行うために行われる「イニシアティブゲーム」なども有効な「レクリエーション・スポーツ」の一環であるから、春の新入社員研修や新チームの結成にあたって、ぜひとも取り入れていただきたい。
また、「世界ゆるスポーツ協会」が考案しているスポーツも面白い。足が遅くても体力に自信のない方でも誰もが楽しめるスポーツを目標に考案されている。「500歩サッカー」「ベビーバスケ」「ハンドソープボール」などタイトルだけでも興味を引く。
競技スポーツは、感動や興奮を喚起し、人々を元気にするが、誰もが実体験するとなると厳しい。高齢化、多様化の進む社会では改めて「レクリエーション・スポーツ」を見直す必要がある。さらに、いつでも誰もが気軽に参加できるようにするためには、情報発信も工夫が必要である。
3月には岡山県スポーツ協会が主催する「岡山スポーツフェスティバル」が3年ぶりに開催されるようだ。広島県や兵庫県に比べても、圧倒的に平地の多い岡山市であるから「バリアフリー特区」として、競技スポーツのみならず、誰もが気軽に参加可能なこれらのスポーツも紹介されると楽しいだろう。
◇
三浦 孝仁 みうら・こうじ Ph.D. IPU環太平洋大学・体育学部長・スポーツ科学センター長。岡山大名誉教授。岡山市スポーツ推進審議会会長。公益財団法人岡山県スポーツ協会スポーツ医・科学委員会委員。一般財団法人岡山市スポーツ協会常務理事・スポーツ振興委員会・委員長。一般社団法人大学スポーツ協会デュアルキャリア委員会研修部会委員。岡山大在職中に顧問を務めた同大ウェイトトレーニング部は10度の全国制覇を果たし、ハンドボール部は過去最下位から1部上位へ引き上げるなど、長年に渡りスポーツの教育・指導・研究やキャリア教育などに携わった。障がい者ダイビング指導2団体の役員も務めている。著書に「大学生のためのキャリアデザイン」(かもがわ出版)、「筋トレっち 走れるカラダの育て方」(東邦出版)、「日本の障がい者ダイビング」(編集工房ソシエタス)など。早稲田大卒、日本体育大大学院 修了。1957年生まれ。