一極集中再び 政府は是正策を練り直せ
人口の東京一極集中が再び強まっている。政府は是正の対策を根本から練り直す必要があろう。
総務省が公表した2022年の人口移動報告によると、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が3万8千人余りで3年ぶりに増加した。埼玉、千葉、神奈川を加えた1都3県の東京圏も転入超過が前年から1万8千人近く増えて約9万9千人となっている。「東京回帰」の傾向は鮮明と言える。
強く懸念されるのは、東京都への転入が勢いを増していることである。新型コロナウイルス禍前に8万人前後で推移していた転入超過は、感染拡大やテレワークの普及などで20年に3万人台へ減り、21年は約5400人まで縮小した。それが、行動制限の緩和で社会経済活動が活発化すると前年の7倍に急増した。
東京都に引っ張られる形で東京圏全体の転入超過が膨らみ、東京圏との転出入で転入超過となった道府県は3年ぶりにゼロだった。その一方で岡山、広島など36道府県が転出超過となり、超過幅が拡大したのは前年の9道県から22道県に増えている。
コロナ禍によって、過度に人口が密集するリスクが認識されたにもかかわらず、再び一極集中が加速した。東京に企業や大学が集積して、若者を中心に全国から人を呼び込む構図が変わっていないことの裏返しでもある。一極集中の是正は遠のくばかりだ。
政府が23年度にスタートする地域活性化の新たな5カ年計画「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、27年度に東京圏の転出と転入を均衡させる目標を掲げる。今回の結果で達成は厳しさを増したと言えよう。戦略で社会課題解決の「切り札」と位置付けるデジタルの活用だけでは到底、太刀打ちできない問題である。
戦略には、テレワークやサテライトオフィスを活用した「転職なき移住」を進める施策を盛り込んでいる。ただ、テレワークを実施した企業の半数超が「できる業務が限られる」などの理由でデメリットの方が多いと回答した民間調査もあり、遠隔勤務が今後広がるのかは不透明だ。
東京圏在住者の3人に1人は地方移住に関心を持ちながら、大半が「仕事や収入」を懸念しているとされる。雇用は移住の鍵を握る。それぞれの地域が雇用を生み出す努力をするのは当然として、企業の地方移転を促す国の優遇税制は利用が振るわず、十分な効果は見込めまい。地方の法人税を大都市部より安くするといった従来の延長線上にはない大胆な施策を打ち出すべきである。
地方創生の目玉施策として安倍政権が掲げた「政府関係機関の地方移転」は、中央省庁の猛反発で文化庁の京都移転などにとどまっている。国策として東京一極集中を是正するために、ゼロベースから検討し直す必要がある。
総務省が公表した2022年の人口移動報告によると、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が3万8千人余りで3年ぶりに増加した。埼玉、千葉、神奈川を加えた1都3県の東京圏も転入超過が前年から1万8千人近く増えて約9万9千人となっている。「東京回帰」の傾向は鮮明と言える。
強く懸念されるのは、東京都への転入が勢いを増していることである。新型コロナウイルス禍前に8万人前後で推移していた転入超過は、感染拡大やテレワークの普及などで20年に3万人台へ減り、21年は約5400人まで縮小した。それが、行動制限の緩和で社会経済活動が活発化すると前年の7倍に急増した。
東京都に引っ張られる形で東京圏全体の転入超過が膨らみ、東京圏との転出入で転入超過となった道府県は3年ぶりにゼロだった。その一方で岡山、広島など36道府県が転出超過となり、超過幅が拡大したのは前年の9道県から22道県に増えている。
コロナ禍によって、過度に人口が密集するリスクが認識されたにもかかわらず、再び一極集中が加速した。東京に企業や大学が集積して、若者を中心に全国から人を呼び込む構図が変わっていないことの裏返しでもある。一極集中の是正は遠のくばかりだ。
政府が23年度にスタートする地域活性化の新たな5カ年計画「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、27年度に東京圏の転出と転入を均衡させる目標を掲げる。今回の結果で達成は厳しさを増したと言えよう。戦略で社会課題解決の「切り札」と位置付けるデジタルの活用だけでは到底、太刀打ちできない問題である。
戦略には、テレワークやサテライトオフィスを活用した「転職なき移住」を進める施策を盛り込んでいる。ただ、テレワークを実施した企業の半数超が「できる業務が限られる」などの理由でデメリットの方が多いと回答した民間調査もあり、遠隔勤務が今後広がるのかは不透明だ。
東京圏在住者の3人に1人は地方移住に関心を持ちながら、大半が「仕事や収入」を懸念しているとされる。雇用は移住の鍵を握る。それぞれの地域が雇用を生み出す努力をするのは当然として、企業の地方移転を促す国の優遇税制は利用が振るわず、十分な効果は見込めまい。地方の法人税を大都市部より安くするといった従来の延長線上にはない大胆な施策を打ち出すべきである。
地方創生の目玉施策として安倍政権が掲げた「政府関係機関の地方移転」は、中央省庁の猛反発で文化庁の京都移転などにとどまっている。国策として東京一極集中を是正するために、ゼロベースから検討し直す必要がある。