さえざえと澄んだ冬の夜空を見上…
さえざえと澄んだ冬の夜空を見上げていると、唱歌「冬の星座」(作詞・堀内敬三)を思い出す。「木枯らしとだえて/さゆる空より/地上に降りしく/奇(くす)しき光よ…」。神秘的に輝く星々は、しばし寒さを忘れさせる▼今時分の夜空を彩る主役はオリオン座だろう。ギリシャ神話の狩人である。目印は、腰のベルトに当たる三つ並んだ星。その左上で、こん棒を振りかざした肩の辺りにある赤っぽいベテルギウスと、左下で青白く輝くシリウス、その左上にあるプロキオンを線で結べば「冬の大三角」となる▼ベテルギウスを囲むように、シリウスやプロキオン、カペラなど明るい1等星6個を結べば、大きな六角形「冬のダイヤモンド」。おしゃれな名だ▼肉眼で観測するのは難しいかもしれないが、今月は約5万年ぶりに地球に接近している彗星(すいせい)もある。空気が乾き、水蒸気が少ない冬の星空は、光が瞬く“宝石箱”でもある▼「星空浴」を提唱するのは天文学者の渡部潤一さんだ。頭上に広がる星空を眺め、宇宙の雄大さを体感することは「忙しい日々の生活に追われ、癒やしを求める現代人にとっては、森林浴と同様に一服の精神的清涼剤となる」。自著「星空を歩く」に記す▼凜(りん)とした空気の中、地上に降る奇しき光。今の時季ならではのぜいたくなショーを楽しまないともったいない。