民生委員の確保 周知図りたい大切な役割
地域の高齢者や障害者、子育て世帯を見守る「民生委員」が、深刻ななり手不足に直面している。欠員は3年に1度行われる全国一斉の委員改選のたびに増え、いまや戦後最大である。
民生委員の役割は、困り事を抱える人や身近に頼れる縁者がいない人を訪ねたり、相談相手になったりすることだ。住民と同じ生活者の目線で孤立を防ぎ、手助けが要る場合は行政や福祉サービスに橋渡しもする。
欠員がさらに増えれば支援の網に漏れが生じかねない。社会全体で危機感を共有し、なり手確保のための対策を急ぐ必要がある。
民生委員は厚生労働相が委嘱する非常勤の地方公務員で、子どもの育ちを支える「児童委員」も兼ねる。交通費などは支給されるものの報酬は無く、ボランティアとの位置付けだ。
町内会や自治会から選出されるケースが多いが、昨今はそもそも適任者が減っているとされる。定年後も働くシニア層の増加、専業主婦の減少などが背景にある。
厚労省によると、昨年12月の一斉改選では定数約24万人に対し1万5千余人の欠員が生じた。欠員数は前回改選より32%増えたという。民生委員制度の前身「済世顧問制度」の発祥地である岡山県は定員の約3%、広島県では約7%、香川県は約2%、最多の沖縄県で約28%の枠が埋まらなかった。
欠員解消に向けては原則75歳未満とされる年齢上限の引き上げ、現役委員のサポート役となるOBの配置などが各地で始まっている。ただ、委員自身の高齢化もかねて問題視されており、制度を維持できるよう、より踏み込んだ取り組みが不可欠だ。
なり手不足の一因に、活動の多忙さが挙げられよう。コロナ禍前の実態調査では委員1人当たりの担当世帯は200前後、年間活動日数は131日に上った。これでは働きながら務めるのは難しい。
一方で住民の課題は多様化、複雑化が進む。見守り対象となる高齢者の増加が見込まれる上、中高年の引きこもり、子どもが家族の世話を担うヤングケアラーといった多岐にわたる問題に対応していかねばならない。防災や悪質商法対策などカバーする分野も広がった。
会議や研修のオンライン化を含め、負担軽減や活動の整理が求められる。場合によっては弁護士や精神科医など専門職の支援を得られやすいような仕組みづくりも行政は検討してもらいたい。
併せて欠かせないのが認知度の向上である。全国民生委員児童委員連合会の昨春の調査では、民生委員の役割や活動内容まで知っている人は約5%にとどまった。
民生委員は存在そのものが地域の安心感につながる。これまで以上に学校現場や企業と連携するなどして周知を強化していきたい。
民生委員の役割は、困り事を抱える人や身近に頼れる縁者がいない人を訪ねたり、相談相手になったりすることだ。住民と同じ生活者の目線で孤立を防ぎ、手助けが要る場合は行政や福祉サービスに橋渡しもする。
欠員がさらに増えれば支援の網に漏れが生じかねない。社会全体で危機感を共有し、なり手確保のための対策を急ぐ必要がある。
民生委員は厚生労働相が委嘱する非常勤の地方公務員で、子どもの育ちを支える「児童委員」も兼ねる。交通費などは支給されるものの報酬は無く、ボランティアとの位置付けだ。
町内会や自治会から選出されるケースが多いが、昨今はそもそも適任者が減っているとされる。定年後も働くシニア層の増加、専業主婦の減少などが背景にある。
厚労省によると、昨年12月の一斉改選では定数約24万人に対し1万5千余人の欠員が生じた。欠員数は前回改選より32%増えたという。民生委員制度の前身「済世顧問制度」の発祥地である岡山県は定員の約3%、広島県では約7%、香川県は約2%、最多の沖縄県で約28%の枠が埋まらなかった。
欠員解消に向けては原則75歳未満とされる年齢上限の引き上げ、現役委員のサポート役となるOBの配置などが各地で始まっている。ただ、委員自身の高齢化もかねて問題視されており、制度を維持できるよう、より踏み込んだ取り組みが不可欠だ。
なり手不足の一因に、活動の多忙さが挙げられよう。コロナ禍前の実態調査では委員1人当たりの担当世帯は200前後、年間活動日数は131日に上った。これでは働きながら務めるのは難しい。
一方で住民の課題は多様化、複雑化が進む。見守り対象となる高齢者の増加が見込まれる上、中高年の引きこもり、子どもが家族の世話を担うヤングケアラーといった多岐にわたる問題に対応していかねばならない。防災や悪質商法対策などカバーする分野も広がった。
会議や研修のオンライン化を含め、負担軽減や活動の整理が求められる。場合によっては弁護士や精神科医など専門職の支援を得られやすいような仕組みづくりも行政は検討してもらいたい。
併せて欠かせないのが認知度の向上である。全国民生委員児童委員連合会の昨春の調査では、民生委員の役割や活動内容まで知っている人は約5%にとどまった。
民生委員は存在そのものが地域の安心感につながる。これまで以上に学校現場や企業と連携するなどして周知を強化していきたい。