障害者施設の虐待 根絶へ背景探り策講じよ
津山市の社会福祉法人「津山社会福祉事業会」が運営する知的障害者施設の元職員が入所者を虐待したとして今月、逮捕された。岡山県は児童福祉法に基づき、元職員が勤務していた「津山ひかり学園ひかりの風」への利用者の新規受け入れを6カ月間停止する行政処分を出した。
県警に暴行容疑で逮捕された元職員は昨年10月、風呂場に行くことを拒んだ中学生の襟元をつかんで引きずるように連れて行ったほか、洗濯物をたたむ作業の途中でその場から離れようとした高校生に対して声を荒らげ、足をつかんで引っ張ったとされる。
県警は同法人が運営する美咲町の「ひかり学園さつきの丘」のパート従業員も入所者への暴行容疑で逮捕しており、県はこの施設についても事実確認を進めている。
こうした行為は入所者の安全を損ねるだけでなく、人としての尊厳も傷つけ、許されないことは言うまでもない。だが、障害者が福祉施設・事業所の職員から受ける虐待は増えている。
厚生労働省の調査によると、2020年度は障害者虐待防止法が施行された12年以降で最多の632件で、前年度から85件増えた。岡山県は3件、広島県6件、香川県4件だった。内訳は暴力や拘束などの身体的虐待が53%と最も多く、被害者は知的障害が72%を占めた。
厚労省は増加の理由を同法の通報義務が浸透したこととみているが、重く受け止めねばならないのは、31%の施設では過去にも虐待があったことである。職員らの意識が高まって通報が定着した一方、虐待が繰り返される施設があることも確かだ。
津山市のひかりの風も21年以降、今回の事件を含めて6件の虐待行為が確認され、県から2度の改善勧告を受けていた。職員個人の問題はもちろん、法人の管理責任も厳しく問わねばならない。
背景として、かつては「教育」「しつけ」と称して利用者を力で抑えつける職員が評価されることが少なくなく、今もその土壌が残る施設があると専門家は指摘している。施設として虐待防止に取り組むには、透明性を高め、内部で注意し合えるようにすることが欠かせない。
ただ、どんなに研修を重ねても「しつけの意識が拭い難い職員もいる。どこの施設も人手不足の中、そうした職員にも頼らざるを得ない」と、岡山市の施設長が明かしていた。障害者施設を巡る構造的な課題も看過できない。
県は2度の改善勧告にもかかわらず、対応が不十分として今回、行政処分に踏み切った。虐待の根絶には自治体の姿勢も重要だろう。継続的な指導とともに、虐待を繰り返す背景にメスを入れ、防止の方策を講じてもらいたい。
県警に暴行容疑で逮捕された元職員は昨年10月、風呂場に行くことを拒んだ中学生の襟元をつかんで引きずるように連れて行ったほか、洗濯物をたたむ作業の途中でその場から離れようとした高校生に対して声を荒らげ、足をつかんで引っ張ったとされる。
県警は同法人が運営する美咲町の「ひかり学園さつきの丘」のパート従業員も入所者への暴行容疑で逮捕しており、県はこの施設についても事実確認を進めている。
こうした行為は入所者の安全を損ねるだけでなく、人としての尊厳も傷つけ、許されないことは言うまでもない。だが、障害者が福祉施設・事業所の職員から受ける虐待は増えている。
厚生労働省の調査によると、2020年度は障害者虐待防止法が施行された12年以降で最多の632件で、前年度から85件増えた。岡山県は3件、広島県6件、香川県4件だった。内訳は暴力や拘束などの身体的虐待が53%と最も多く、被害者は知的障害が72%を占めた。
厚労省は増加の理由を同法の通報義務が浸透したこととみているが、重く受け止めねばならないのは、31%の施設では過去にも虐待があったことである。職員らの意識が高まって通報が定着した一方、虐待が繰り返される施設があることも確かだ。
津山市のひかりの風も21年以降、今回の事件を含めて6件の虐待行為が確認され、県から2度の改善勧告を受けていた。職員個人の問題はもちろん、法人の管理責任も厳しく問わねばならない。
背景として、かつては「教育」「しつけ」と称して利用者を力で抑えつける職員が評価されることが少なくなく、今もその土壌が残る施設があると専門家は指摘している。施設として虐待防止に取り組むには、透明性を高め、内部で注意し合えるようにすることが欠かせない。
ただ、どんなに研修を重ねても「しつけの意識が拭い難い職員もいる。どこの施設も人手不足の中、そうした職員にも頼らざるを得ない」と、岡山市の施設長が明かしていた。障害者施設を巡る構造的な課題も看過できない。
県は2度の改善勧告にもかかわらず、対応が不十分として今回、行政処分に踏み切った。虐待の根絶には自治体の姿勢も重要だろう。継続的な指導とともに、虐待を繰り返す背景にメスを入れ、防止の方策を講じてもらいたい。