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岸田政権発足1年 「聞く力」の成果が見えぬ

 岸田文雄政権がおととい、発足から1年を迎えた。昨秋の衆院選、今夏の参院選と大型国政選挙で2連勝したにもかかわらず、内閣支持率の急落に見舞われている。

 安倍晋三元首相の銃撃事件後に判明した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との関係や、強行と批判された安倍氏の国葬が影響しているのは間違いなかろう。参院選勝利で当面は国政選挙のない「黄金の3年間」を手に入れたはずが見る影もない。

 想定外の事態だけでなく、首相の政治手腕に不満が高まっている。共同通信社が先月実施した世論調査では内閣の不支持率が初めて支持率を上回った。不支持の理由は「経済政策に期待が持てない」と「首相に指導力がない」がそれぞれ26・7%を占めた。

 首相の経済政策は変質を重ねてきた。昨秋の自民党総裁選では、分配によって格差を是正する「新しい資本主義」を訴えて期待値を高めた。だが、早々に金融所得課税の強化を封印するなど独自色はかすみ、成果が乏しいまま今月3日召集の臨時国会では所信表明演説から「分配」の文字が消えた。分配重視の姿勢が後退したとの見方も広がる。

 党総裁選で打ち出した「令和版所得倍増」もそうだ。分配機能を強化して所得を引き上げる構想は、貯蓄から投資への流れを促す「資産所得倍増」に切り替わった。倍増に向けた手だてを盛り込んだプランを年末に策定するが、物価上昇が家計を直撃し、約6割が投資に回す余裕がないと答えた世論調査もある。政策の実効性が問われよう。

 首相は「聞く力」を掲げ、強権的とされた安倍、菅両政権との違いをアピールしてきた。しかし実際の姿勢は言行不一致と言わざるを得ない。

 国葬を巡る対応では、国会で「説明不足との指摘は謙虚に受け止める」「丁寧に説明を続ける」と述べる一方、説得力のある答弁は聞かれなかった。国葬を速断したのは党内基盤の弱い首相が保守勢力をつなぎ留める狙いがあったとされる。国民や国会との合意形成を後回しにするようでは矛盾していると言われても仕方なかろう。

 看板政策の新しい資本主義にしろ、デジタル田園都市国家構想にしろ、目指すべき国家像や、そこに至るまでの具体的な道筋は今のところ見えづらい。確たる実績もなく、政策が迷走している印象は否めない。

 差し当たっての正念場となる臨時国会は、これまでと様相が異なる。「政策提案型」で対応してきた野党第1党の立憲民主党は、執行部の顔ぶれが変わり「追及型」に軸足を移した。距離を置いてきた日本維新の会とも共闘して、旧統一教会問題などで攻勢を強める構えだ。

 政権が局面を打開するには説明責任を果たし、結果で信頼を回復するほかあるまい。首相の指導力と実行力の真価が厳しく試されている。

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