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河井元法相実刑 政治不信は拭えぬままだ

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた元法相の前衆院議員河井克行被告に、東京地裁は懲役3年、追徴金130万円の判決を言い渡した。法相経験者への実刑判決は異例だ。

 判決によると、元法相は妻の案里氏=有罪確定=の当選を目指して地元議員ら100人に計約2870万円を配った。相手が広島県全域にわたる大規模買収事件で、検察は「前代未聞」と指弾した。民主主義の根幹となる選挙の公正を踏みにじった罪は極めて重い。妥当な判断と言える。

 判決では量刑が焦点となった。元法相は昨年8月の初公判で無罪を主張したが、今年3月に一転して起訴内容の大半を認めた。出廷した議員らが次々と「集票依頼だった」と証言し、外堀が埋まったからだろう。議員辞職して執行猶予付きの判決を求めたものの、東京地裁は「同種の選挙買収の中でも際立って重い部類の事案。反省の態度を考慮しても相当期間の実刑に処するのが相当だ」と断じた。

 事件は、参院選で改選2議席の独占を狙った自民党本部が、党県連の反対を押し切って案里氏を擁立したのが発端となった。党県連はベテラン現職の支援に回り、情勢が厳しいとみた元法相が事件全体を差配し、大半の現金配布を自ら実行した。受領を拒む相手に何度も迫ったり、無理やり受け取らせたりしている。元法相は即日控訴したが、認定された事実には、あぜんとさせられる。

 判決で一つの区切りがついたとはいえ、全容が解明されたわけではない。

 自民党本部は選挙前、案里氏の陣営にベテラン現職の10倍に当たる1億5千万円を投入した。うち1億2千万円は税金で賄われている政党交付金と分かっている。それが買収の原資になった疑惑が残るものの、判決では触れられなかった。二階俊博党幹事長らは、いまだに説明責任を果たしていない。党本部は徹底的に調べ、経緯や使途を明らかにしなければならない。

 現金を受け取った側の刑事責任が問われていないのも看過できない。被買収者のうち40人は広島県議、市議ら政治家で、「違法な金」と認識していた議員もいる。一部は辞職したが、十分な責任を取ることもなく職にとどまるのでは理解を得られまい。

 これだけ厳しい視線が注がれながら、国会議員からは当事者意識が十分に伝わってこない。当選無効になった案里氏に歳費や期末手当などが支払われ続けて批判を浴び、返還を義務付ける法改正の議論が浮上した。しかし自民が慎重な姿勢を崩さず、先の国会提出は見送られた。

 国民の政治不信は拭えないままでいる。次期衆院選では「政治とカネ」の問題への対応が主要な争点になる見通しだ。国民の信頼をどう取り戻すのか。これまで以上に各党の本気度が問われる。

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