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米ロ首脳会談 安定した関係への一歩に

 米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領がスイス・ジュネーブでバイデン政権発足後初めて直接会談した。両国首脳が約3年ぶりに対面し、「冷戦終結後最悪」とされるほど緊張した関係の改善へと一歩踏み出したことは評価したい。

 とはいえ、両者が発表した共同声明はわずか3段落にとどまった。冷戦下の1985年、同じジュネーブで初会談に臨んだ当時のレーガン米大統領とソ連のゴルバチョフ共産党書記長による共同声明が30段落以上あったのとは対照的に、双方が最小限の合意で辛くも乗り切った形だ。

 主張の違いが鮮明になる中、合意に至ったのは核軍縮を軸にした2国間協議「戦略的安定対話」の創設である。軍備管理の在り方や核戦争の危機を低減させる方策を検討する新たな枠組みで、両国の軍事専門家らが参加する。

 核兵器を巡っては、依然として世界の約9割を米ロが保有している。ともに老朽化した核弾頭に代えて新型を配備しているとの指摘もある。二大核大国の相互不信が続けば軍拡に歯止めがかからず負の連鎖に陥りかねない。このたび対話重視の姿勢を示したのは賢明な判断といえる。

 新たな協議では今年2月に合意により5年延長した新戦略兵器削減条約(新START)の後継体制を模索することになる。現状では新STARTは米ロ間に残る唯一の核軍縮の枠組みだ。射程の長い戦略核と弾道ミサイルなどの核運搬手段を削減対象とするが、今後は短距離型の戦術核など対象外の兵器に議論を広げる必要がある。

 問題は軍縮の進展にどう実効性を持たせるかだろう。険しい道のりには違いないが、早期に取り組みを始めることが求められる。将来的には軍拡を進める中国をはじめ他の保有国を巻き込んだ多国間の枠組み構築につなげなければならない。

 根深い対立もあらためて浮き彫りになった。バイデン氏が問題視する米政府機関などへのサイバー攻撃について、プーチン氏はロシア政府の関与を否定した。バイデン氏はロシアの反体制派弾圧など人権問題も提起したが、プーチン氏は耳を貸さなかった。

 そもそも専制主義への対抗姿勢を鮮明にしているバイデン氏にとっては、民主主義陣営のリーダー像を印象付けることが優先課題だったとされる。一方、ウクライナ問題などで主要国(G8)から排除されて国際政治でアピールできる場が減っているプーチン氏も、世界が注目する会談で影響力を誇示すること自体が狙いだったのだろう。

 相互に追放した大使を復帰させることで一致するなど歩み寄りは見られたとはいえ、核大国同士の信頼醸成の取り組みはこれからが正念場だ。米ロ関係の改善が安定した国際情勢につながることを両国は認識し、対話を重ねなければならない。

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