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ネット広告規制 便利で透明性高い市場を

 米グーグルなど巨大IT企業が手掛けているインターネット広告について、政府のデジタル市場競争会議が規制強化に向けた最終報告をまとめた。政府は今年2月、ネット通販などの巨大IT企業に対して取引の透明性を高めるための新法を施行した。報告はこの新法の対象にネット広告を加えることを柱としている。2022年度以降に適用する方向だ。

 急成長が続くネット市場では、巨大IT企業による寡占がさらに進み、公正な取引が阻害されることが懸念されており、広告主や消費者の保護は大きな課題となっている。市場のひずみを正し、透明性や公平性を確保できる枠組みの構築が急がれる。

 スマートフォンの普及などに伴い、ネット広告は急拡大している。国内では19年に初めてテレビ広告費を上回り、20年は2兆2290億円と広告費全体の3分の1以上を占める最大の媒体となった。検索サービスのグーグルや、会員制交流サイト(SNS)のフェイスブックなど「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業の存在感が強まっている。

 一方で、広告のシステムが複雑で、取引内容や価格などが外部から分かりにくいことや、広告のクリック回数を水増しして不正に広告料を取得する行為などが問題視されている。閲覧履歴などに基づき利用者の興味に沿って表示される「ターゲティング広告」を不快に感じる消費者が多いことも課題だ。

 最終報告では、第三者による広告効果の測定を受け入れるなどの体制整備や、自社優遇につながりかねない取引を特定し、管理方針を策定することを要求した。ターゲティング広告については、収集する情報の内容や、利用者が情報活用を拒否できる方法を適切に示すことを求めた。

 市場の透明性の向上などが期待される一方で、懸念も拭えない。広告の価格や手数料などは「営業上の秘密」といった理由から一律の開示は困難とみられるからだ。公正な運営体制の整備や実行に関しては、事業者の自主性が重視されており、規制の効果は未知数だ。

 とはいえ、プラットフォーマーが提供している各種サービスは今や、生活や企業活動に根付いている。巨大IT企業は事業者として責任の重大さを自覚し、市場の健全性確保へ向けて真摯(しんし)に取り組むことが強く求められる。

 ネット広告を巡っては、海外でも規制強化の動きが広がっている。米国では昨年、テキサス州などが、グーグルがオンライン広告市場の競争を阻害し、価格を支配しているとして独占禁止法(反トラスト法)違反で提訴した。

 健全なネット市場の実現に向けては、こうした海外の規制当局との連携も重要だ。消費者や企業にとって、高い利便性と信頼性が両立した市場環境を目指してほしい。

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