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半導体の確保 国際競争生き残る戦略を

 パソコンやスマートフォン、自動車、家電製品とあらゆる電子機器に使われ「産業のコメ」ともいわれる半導体の不足が世界的に深刻化し、サプライチェーン(調達・供給網)が揺らいでいる。

 米国や中国、欧州連合(EU)が供給確保へ国際競争を始める中、政府も開発や生産体制の強化に向けた国家戦略を月内にもまとめる方針だ。先端半導体の確保は将来の産業発展を左右するとされるだけに、危機感とスピード感を持って進めてもらいたい。

 背景には国産半導体の世界シェアの激減がある。1980年代後半には50%を超えていたが、開発競争の中で台湾や韓国勢が台頭。2019年には約10%まで低下した。中でも微細加工が必要な先端半導体は、台湾積体電路製造(TSMC)が世界をリードする。日本勢との技術差は大きいとされ、国産半導体の将来は危ういといえよう。

 一方、新型コロナウイルス禍の中で半導体の不足が顕在化した。在宅勤務や巣ごもり生活でパソコンやゲーム機、家電の世界的な需要が増加。自動車各社は減産に追い込まれ、3月には国内半導体大手ルネサスエレクトロニクスの主力工場火災が事態の悪化に拍車を掛けた。

 ただ、半導体不足は一時的なものではない。第5世代(5G)移動通信システムやIoT(モノのインターネット)の普及などで需要の急拡大が続く。その上、先端技術を巡る米中の対立が激化。技術の囲い込みが起きるなど、経済安全保障の面からも半導体の争奪戦が始まっている。

 米国は3月に発表した約250兆円規模の巨額インフラ投資計画に半導体生産の補助金を盛り込み、国内生産の拡大や同盟国との連携を図る。EUはアジア依存を見直し、域内での次世代半導体生産に巨額投資を行う。多くを輸入に頼ってきた中国も巨費を投じて半導体自給率の大幅アップを目指している。

 日本も3月から、経済産業省が有識者や関連企業トップを集めた検討会議で半導体強化戦略の議論を進めている。海外メーカーとの連携や生産拠点の誘致が戦略の柱となる。海外有事などで供給網が断たれる危険に備え、量産工場の国内立地にもつなげたい意向だ。工場新設に数千億円が必要とされる分野だけに、金融や税制など国の支援が欠かせまい。

 トップレベルの競争力を保つ国内の素材、製造装置メーカーや研究機関には海外勢との共同開発を促し、技術力の強化を図る。自動運転技術などで先端半導体を必要とする自動車産業の集積といった強みも生かしたい。そうした意味で、TSMCが国内に設立を表明した研究開発拠点の動向は注目されよう。

 半導体の確固たる開発・生産体制やサプライチェーンを築くことは、技術立国としての基盤と日本経済の将来にとって不可欠だ。

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