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出生前診断見直し 意思決定支える仕組みを

 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」について、実施する医療機関や検体の検査を担う衛生検査所の認証制度を運営する組織を新たに設け、国も審査に参加する方向で見直しが進められている。厚生労働省の専門委員会が示した方針を受けたものだ。

 新出生前診断は妊婦の血液に含まれる胎児のDNAをもとに、ダウン症などの原因となる3種類の染色体異常を判定する検査で、日本では2013年に導入された。関連学会は対象者を原則35歳以上に限り、認定を受けた施設でのみ実施を認めている。

 だが、出産の高齢化に伴って検査への関心が高まる中、無認定のままで実施する医療機関が増えている。3月時点で138施設と、岡山大病院など109の認定施設数を上回るとの調査結果もある。検査実態は不透明で、結果について十分な説明がないまま、妊婦が混乱する問題も指摘されており、看過できない。

 認定施設だけでこれまでに8万人以上が検査を受け、陽性と確定した妊婦の多くが中絶したという。重い判断を迫られる恐れがある検査だけに、十分なカウンセリングなどが欠かせない。施設認定に国が関与し、質と信頼の向上を図ることはうなずける。

 一方で、障害者の尊厳を尊重するノーマライゼーションの理念を踏まえ、新出生前診断を一律に実施したり、推奨したりすることは否定されるべきであるとの考えを専門委員会は示した。そうした中で妊婦の不安や苦悩に寄り添い、意思決定を支えるような仕組みを整えてほしい。

 今夏に発足させる認証制度の運営組織は関係学会や患者団体などで構成し、厚労省も参加する。実施施設の認証や検査の精度評価に加え、検査に関する情報提供を担う。

 「医師が妊婦に検査の情報を積極的に知らせる必要はない」とした旧厚生省専門委の見解も約20年ぶりに改めることになる。正確な情報を提供することによって、十分な体制の整っていない無認定施設に妊婦が流れないようにするのが目的である。

 とはいえ、提供する情報の内容や伝え方を巡っては慎重な検討が不可欠だ。

 染色体疾患の当事者らへの差別を助長しかねないという心配もある。日本ダウン症協会は「ダウン症が検査をして産むか産まないか選択する必要がある障害だとの誤った理解を広めかねない」と丁寧な対応を求めている。

 検査技術が進展する一方で、優生思想の助長を懸念する声があることは忘れてはならない。検査を受けない意思も十分尊重する必要がある。

 併せて、検査を受ける妊婦がさらに増えることにも備えが求められる。異常が見つかった場合の対応を短期間で決めざるを得ず、苦悩する妊婦は少なくない。カウンセリングなどを担う人材の育成にも力を入れてもらいたい。

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