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「子ども庁」構想 政策の中身の議論尽くせ

 子ども関連政策の司令塔となる「子ども庁」の創設へ向け、自民党が党内議論を加速させている。菅義偉首相が実現に意欲を見せ、指示したものだ。

 次期衆院選に向け、デジタル庁創設に続いて「行政の縦割り打破」を看板政策としてアピールしたい首相の狙いが透けて見える。6月ごろに政府が策定する「骨太方針」への明記を目指すという。

 気がかりなのは、議論が行政組織の見直しに矮小(わいしょう)化されないかということだ。重要なのは組織を変えて、何を目指すかということだろう。自民党は党内議論を通じ、国民に示してもらいたい。

 子どもに関する政策は、厚生労働省が保育所や障害児、虐待対策を、文部科学省が幼稚園や学校教育を、内閣府が認定こども園や少子化対策などを所管している。虐待対策などは法務省や警察庁にも関わる。これまで、縦割りで迅速な対応ができないといった指摘もされてきた。

 かつて旧民主党政権が「子ども家庭省」創設を目指したこともあった。自民党内でも創設を目指す動きは今までにもあったものの、省庁や業界団体の抵抗などもあり、実現しなかったという。

 自民党内には「国民受けが良い」として子ども庁創設に期待する声があるというが、組織の一部見直しにとどまれば、縦割りの問題は解消されまい。看板倒れに終わらないかとの懸念が拭えない。

 菅首相が検討を指示するきっかけとなったのは、自民党の議員有志がまとめた提言だった。提言では、強い権限を持った子ども庁の創設と専任の子ども担当相の新設だけでなく、国内総生産(GDP)に占める子育て関連支出の比率を倍増させ、欧州並みにするよう求めている。

 政府による子育て関連支出は日本の場合、GDP比で1%台にとどまり、先進諸国の中で著しく低い。子ども優先に政策のかじを切るという自民党の決意を示すことができるのか、注目したい。

 その上で重要なのが政策の中身である。子どもを産み、育てやすくするために何が欠けているのか。虐待やいじめなどから子どもの命を守るために何が必要なのか。本質的な議論を進め、課題を整理していかねばならない。

 子ども庁という政策の司令塔ができたとしても、実際に子どもに関わる対策を担うのは自治体である。市町村は競って独自の子育て支援策などを講じてきたが、地域格差も生じており、是正していく必要がある。子どもたちに接する自治体職員をはじめ、民間団体などが切実に求めるのは人員と財源の拡充だ。それができる予算を確保することこそ、国の責務であろう。

 コロナ禍で出生数はさらに減っており、子育て世帯の困窮も深刻だ。子ども庁をめぐる議論を待たず、喫緊の課題については、政府は対策を急ぐべきだ。

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