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日米首脳会談 同盟の深化をどう進める

 菅義偉首相とバイデン米大統領による日米首脳会談が、ホワイトハウスで行われた。バイデン氏が対面で首脳と会談したのは就任後初めて。安全保障や気候変動、新型コロナウイルス対策など幅広い分野で意見を交わし、日米同盟の重要性を再確認した。

 各国首脳の中で真っ先に菅氏が選ばれたのは、覇権主義的な動きを強める中国に対峙(たいじ)するためだ。バイデン政権は「21世紀の民主主義と専制主義の闘い」を掲げ、同盟国と中国包囲網の構築を急ぐ。その中軸として日本へ寄せる期待の大きさだろう。

 首脳会談で交わされたさまざまなテーマの中心に流れるのも、中国にどう向き合っていくかだった。

 沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海では、中国による海洋進出の動きが地域の緊張を高めている。両首脳は「力での一方的な現状変更の試みと地域の他者への威圧に反対する」ことで一致。尖閣が、米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象だと再確認したことは評価できよう。

 最も注目されたのが台湾情勢を巡る扱いだった。共同声明では、中国の圧力で緊張が高まる台湾海峡を巡って「平和と安定の重要性を強調する」と明記した。

 日米首脳が共同文書で台湾に言及したのは、冷戦期の1969年以来のこと。中国の暴走に警鐘を鳴らすメッセージだが、台湾支援に動くバイデン氏の強い働き掛けに、一貫して慎重だった日本側が受け入れさせられた形だ。

 中国への対応は“新冷戦”の状態にある米国と、近隣国で経済的な関係なども深い日本とでは温度差がある。台湾の件では、「両岸問題の平和的解決を促す」との言葉を米国に要請して付け加え、配慮を示したが、中国は「強烈な不満」を表明した。

 共同声明には、香港や新疆ウイグル自治区の人権状況に「深刻な懸念を共有する」と盛り込んだ。ウイグル問題では欧米が制裁を行使しているが、日本は一線を画す。欧米からの同調圧力が強まろう。

 今回は初会談とあって日米の強固な絆のアピールに力点が置かれ、日本側への譲歩も見られた。だが、今後米中対立が激化すれば、安全保障上の要求も強まろう。日本が強権的行為に毅然(きぜん)と臨むのは当然だが、米中の緊張緩和へ対話を促す役割を担うべきだ。

 共同声明は、新型コロナ対策や気候変動問題での協調も盛り込んだ。折から、米中両国が地球温暖化対策で協力するとの共同声明が発表された。地球規模の課題は国際社会の連携が欠かせない。こうした取り組みから、中国を国際秩序に組み込む糸口を見いだしたい。

 日本は対中国政策をはじめ、独自の外交戦略を打ち出さなければ、米国追随は避けられまい。米中対立のはざまでその岐路に立たされていることを覚悟すべきだ。

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