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文化財の活用 地域主体で魅力を磨こう

 古代吉備最大の前方後円墳・造山(つくりやま)古墳を中心とする造山古墳群(岡山市北区新庄下、全て国史跡)に異彩を放つ存在が現れつつある。2023年の完成を目指し、岡山市が復元整備する千足(せんぞく)古墳だ。岡山県内で初めて築造時の姿に復元される前方後円墳の迫力は、1500年以上前の歴史的景観を一目でイメージさせてくれる。吉備路観光の新たなスポットにもなりそうだ。

 保存優先から活用重視へ。文化財行政のあり方を大きく転換した改正文化財保護法の施行から2年。国の観光戦略で、伝統建築や史跡などの文化財が訪日外国人客らを引き付ける観光資源と位置付けられる中、その活用を巡り、地域でも新たな動きが見え始めている。千足古墳の整備はその先例ともいえる。

 改正法で注目されるのが、市町村が作成し、国が認定する「文化財保存活用地域計画(地域計画)」だ。地域の文化財行政の総合的なビジョンとなる。岡山県内では昨年、津山市が初めて策定した。国県市の指定を受けていないものも含む幅広い文化財のデータベース化、国史跡・津山城跡や国重要伝統的建造物群保存地区を結ぶ周遊観光ルートの設定、食や祭りも含め、地域に根差した計画となっている。備前市など数市でも策定の動きがあり、積極的な対応が期待されよう。

 個別の国指定文化財ごとに県や市町村など管理団体がつくる「保存活用計画」の新設に加え、これまで教育委員会に限定していた文化財行政の所管を観光や都市政策を担う知事や市町村長部局で担当できるように柔軟化したのも目を引く。既に津山、総社、瀬戸内市で移管例が出ている。効果に注目したい。

 改正法では地域計画をはじめ、市町村に大きな役割が求められている。とはいえ、中心となるべき専門職員の不足は深刻だ。19年度の県教委の調べでは、主力となる埋蔵文化財専門職員の配属も県内27市町村のうち18市町だけ。1人のみの自治体も多く、人材の確保と育成が急がれる。

 そのカバーも含め、県の役割は重要だ。岡山県が改正法と地域計画をつなぐ都道府県レベルの「文化財保存活用大綱」を他に先駆けて作成したのは評価できる。今後は地域計画策定の支援や、吉備路周辺など市町村域を超えて関連性の強い文化財が広がる場合の調整役も求められる。

 今回の法改正は、東京五輪・パラリンピックを見据え、文化財を活用し、観光需要の喚起や地域経済の活性化につなげようとしたものだ。ただ観光には向かなくても、地域ならではの歴史や文化を伝え、子どもの郷土愛を育て、住民のアイデンティティーになるものは少なくない。

 文化財を劣化させることなく次代へ受け継ぐ保護が前提となるのは言うまでもなかろう。その上で、地域の宝として価値と魅力を磨き直す活用法を探りたい。

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