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原発処理水の放出 欠かせぬ情報公開の徹底

 東京電力福島第1原発で増え続けている処理水の処分方法について、政府が海洋放出する方針を正式決定した。2年後をめどに放出し、終了には数十年かかる見通しだ。

 決定を受け、全国漁業協同組合連合会は「到底容認できるものではない」との抗議声明を発表した。原発事故に加え、新たな風評被害を招けば復興途上にある水産業などに大きな打撃となろう。

 こうした懸念に対し、政府がこれまで説明を尽くしたとは言いがたい。不安や不信を拭うため、情報公開の徹底などが放出の前提となる。

 事故後、溶けた核燃料を冷やすための注水が続いている。建屋に流れ込む雨水や地下水もあり、放射性物質を含む大量の汚染水が発生する。浄化装置で処理しているが、放射性物質の中でもトリチウムは技術的に除去できないため、処理水はタンクにためて敷地内に保管してきた。

 既にタンクは千基を超え、東電によれば2022年秋以降にタンク容量が満杯になるという。政府は今後、廃炉作業を進める上で新たな施設を整備する用地が必要になるとし、「処理水の処分は避けて通れない」と主張していた。

 トリチウムを含む処理水の海洋放出は国内外の原発や関連施設でも行われている。政府はトリチウム濃度を国の基準の40分の1未満まで薄めて放出する方針を示した。

 それでも海洋放出に対して国内外から懸念の声が上がるのは、通常の原発ではなく、重大事故を起こした原発だからである。実際、処理水には除去しきれなかった他の放射性物質が基準値を超えて残っていることが判明している。東電は海洋放出までに再浄化し、トリチウム以外は除去できると説明している。

 処理水の処分方法を巡っては、水産業への影響を避けるため、地上での長期保管を求める声もあるが、そうした選択肢が十分に検討された形跡はない。「海洋放出ありき」で政府が突き進んだように見えることも、不信感を増幅させている一因だろう。

 海洋放出に踏み切るなら、政府は「処理水は安全」と主張するだけでなく、裏付けとなる科学的データを開示し、懸念の払拭(ふっしょく)に努めねばならない。政府が国際原子力機関(IAEA)の協力を得て、信頼性を確保する方針を示したことは当然だ。

 IAEAが専門家を福島に派遣し、処理水のモニタリング(監視)の手法などを含め、一連の作業が適切かどうかを評価するという。原子力を専門とする国際機関が関与することは、透明性を高める上で極めて重要となる。

 政府が講じるとしている風評被害対策も具体的にはこれからだ。水産物などの販路をどう確保し、地域の産業をどう支えていくのか。風評被害が生じた際の東電の賠償の仕組みはどんなものか。政府は丁寧に説明し、地元の理解を得なければならない。

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