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高齢ドライバー 納得ができる実車試験に

 加齢による身体の衰えは個人差が大きい。高齢ドライバーの交通事故を防ぐには、一人一人の状態を踏まえた対策が大切だ。新たに導入される実車チェックを、高齢者が自らの運転について客観的に振り返るきっかけにしたい。

 警察庁の有識者会議が先月、改正道交法で義務化される運転技能検査(実車試験)の対象について、免許更新前の約3年間に信号無視など11種類の違反を一つでもした75歳以上の人とする報告書をまとめた。詳細を詰め、来年6月までに改正法を施行する。

 対象者は教習所などで車を運転し、信号通過や右左折といった課題の検査を受ける。100点満点中70点以上なら普通免許合格で、不合格の場合は更新できない。警察庁が昨年8~9月に行った模擬試験では、75歳以上のドライバー218人のうち、不合格は2割強の50人だった。

 当事者が気になるのは、検査の対象だろう。信号無視のほか、逆走や速度超過、Uターン禁止などの違反である。過去3年間にこの11種類のうちいずれかの違反をした運転者が、死亡・重傷事故を起こした割合は全体の約2・1倍に上ったという。こうした実態を丁寧に説明して、納得を得ることが必要だ。

 高齢ドライバーによる事故は後を絶たない。75歳以上の人が最も過失の重い「第1当事者」となった交通死亡事故は昨年、岡山県の8件、広島県の7件、香川県の6件を含めて全国で333件あった。

 前年より68件減ったが、免許保有者当たりの件数は75歳未満の2倍以上だった。2019年に東京・池袋で起きた高齢運転者の暴走事故の影響もあり、免許証の自主返納などが進んでいるとはいえ、事故割合は高止まりが続いていると言わざるを得ない。

 昨年6月成立の改正道交法に実車試験や、自動ブレーキなど先進安全機能を備えた「安全運転サポート車(サポカー)」が条件の限定免許の創設が盛り込まれたのは、このためである。

 今回の報告書は22年には15万人超が実車試験の対象となると試算している。合格者は認知機能検査や高齢者講習を受け免許を更新する。ただ、既に行われているこうした講習などは高齢運転者の増加で予約が取りにくいことが問題となっており、新制度とともに混雑の解消が求められる。

 一方で、運転しなければ生活が難しいという人は都市部にも少なくない。運転できない不便さを減らすことも欠かせない。岡山県内の自治体なども、デマンド(予約型乗り合い)タクシーや小型のコミュニティーバスの運行、住民による送迎サービス、「買い物弱者」支援のための移動販売車の運行といったさまざまな試みを行っている。一方で採算面などの課題もある。

 各自治体は住民と力を合わせて、それぞれの実情を踏まえ地域に応じた移動手段を探ってもらいたい。

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