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米イラン協議 緊張緩和へ歩み寄る時だ

 イラン核合意の立て直しに向けたバイデン米政権とイランとの間接協議がウィーンで行われた。両国の本格的な交渉は、トランプ前政権が合意を離脱した2018年5月以降初めてのことだ。

 両国とも協議に期待を示し、核合意再建への機運はやっと高まり始めた。今こそ歩み寄りを図らねばならない。

 合意当事国の英仏独中ロとイランによる合同委員会が開かれたのに合わせ、米国の代表が現地入りした。仲介役の欧州連合(EU)の担当者らが米イランの代表と別々に会談し、双方の意見を伝えた。米国を除く関係国は9日も合同委員会を開くという。

 米国はウラン濃縮活動の制限と厳格な核査察受け入れを求め、イランは主要財源である原油輸出と海外との銀行取引の正常化を最優先に要求している。緊張緩和に向けたEUなどの努力は歓迎したい。

 核合意はイランの核兵器保有を防ぐため、米欧などとイランが15年に結んだ。イランが核開発を制限する見返りに、米欧などが制裁を解除する内容である。

 トランプ政権は18年、合意を一方的に離脱して制裁を再発動し、イランは対抗して合意破りを繰り返した。今年1月初めにウラン濃縮度を兵器級に近づく20%に引き上げ、2月には国際原子力機関(IAEA)による査察の制限に踏み切るなど、極めて憂慮される事態となった。

 潮目が変わったのは3月初めのIAEA理事会でイラン非難決議の採択が見送られたことだった。イランが「米国が妥協のシグナルを発した」と受け取ったとされる。

 バイデン政権はイランとの交渉をまとめて中東を安定させ、中国との競争に力を入れたい考えだろう。だが、核合意存続を重視するイランのロウハニ大統領の任期満了に伴う6月の大統領選で保守強硬派が政権を奪取すれば交渉の機運は損なわれる。協議は急ぐ必要がある。イランの現政権も選挙前に制裁を解除し、経済を上向かせて国民の支持を回復したいに違いない。

 とはいえ、互いの不信感は根深く、先行きは到底楽観できない。ともに国内で合意に批判的な勢力の発言力が強く、対話の成否は両政府がそれを抑えられるかにかかる。

 日本は輸入する原油の9割が、イランの面する中東のホルムズ海峡を通過している。核合意が崩壊し、中東がさらに不安定になれば影響は大きい。両国に影響力を持つ日本外交の知恵も問われる。

 警戒しなければならないのは中国の動きだ。3月末に中東諸国を歴訪した王毅国務委員兼外相がイラン・テヘランで、貿易や安全保障など今後25年にわたり両国の連携強化をうたった協定に署名した。

 対米で共闘する狙いは明白で、イランも米国をけん制する意図があろう。だが、将来への展望を欠き、国際協調を傷つける行動は慎まねばならないのは言うまでもない。

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