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新高校教科書 創意工夫で深い学び育め

 2022年度から高校で使われる教科書について、文部科学省が検定結果を公表した。「主体的、対話的で深い学び」を掲げる新しい学習指導要領に対応した初めての高校教科書となる。その理念を生徒がどう身につけていけるのか。教育現場の創意工夫が問われよう。

 新指導要領に伴い、科目が大幅に再編された。多くの教科書で新たに盛り込まれたのが自ら課題を見つけて調べ、表現する「探究学習」だ。随所に問いを設け、図表・資料などを通して考察や議論を促す仕組みが施されている。

 そうした「深い学び」が重視される中、今回の検定の目玉とも言えるのが新設された必修科目の一つ「公共」である。選挙権年齢が18歳以上となり、22年度には成人年齢も引き下げられる。これを踏まえ、主権者や社会の担い手として政治や社会にどう関わっていくべきかを考えることに重きを置く。

 選挙の争点や政策を比較した上での模擬選挙の体験や、「核兵器禁止条約」への日本不参加をどう考えるかなど、生徒に投げかけるテーマは多彩だ。大学医学部の入試で、女性の受験者が不利な得点操作を受けた問題を取り上げた教科書は、さまざまな視点から男女平等を巡る議論へと導く。生徒にとって身近な事柄や、関心がある問題を通したアプローチには効果が期待できよう。

 授業を巡っては、とかく教員から生徒への“一方通行”との批判がある。効果的な探究学習を実現することで、その流れを変えたい。ただ、教科書を有効に生かせるかどうかは教員の指導力が鍵を握っており、課題も多い。

 新たに必修科目となった「情報I」では、これからのデジタル社会に対応するためプログラミングやデータ活用といった分野も扱う。だが、公立高の担当教員の5人に1人程度が正規の専門免許を持っていないという。

 教員の力量に大きな差が出れば、生徒への影響が懸念される。専門外の教員でも使いやすいように配慮した教科書はあるが、学習内容の高度化に対応した授業にしていくためにも、専門性を高める取り組みが急がれる。

 大学入試を意識せざるを得ない高校では、一方通行の知識詰め込み型授業から脱しきれない悩みも抱えている。そうした思いを反映するかのように、教科書には用語を羅列する形式を踏襲した記載も見られる。深い学びを実践しながら、大学入試に対応できる学力をいかに育てるかが、教育現場に問われていよう。

 新たな教科書を使った高校の授業が始まるまで、あと約1年となった。学校教育の大きな転換点への取り組みを、個々の教員に丸投げしたのでは成果はおぼつかない。高校と大学が連携を強めるとともに、国や自治体には探究学習の推進を支える環境の整備を求めたい。

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