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コロナと出生数減 「産みたい」支える施策を

 少子化が国の想定以上に加速している。2020年の出生数が速報値で約87万人となり、過去最少を更新した。

 在日外国人などを差し引いて公表する確定値では84万人程度となるとの見通しも出ている。19年に初めて90万人を割り込んでおり、減少に歯止めがかからない情勢だ。

 婚姻や妊娠届の件数も大幅に減ったことから21年の出生数はさらに落ち込む公算が大きい。21年に70万人台に突入するとの民間試算もあり、現実となれば公的推計より12年前倒しとなる。

 もともと出生数に関する政府の見通しは甘すぎると言われてきた。厳しい現実と向き合い、思い切った対策を進めることが不可欠である。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響も出始めている。経済的な不安や、里帰り出産の制限などが妊娠をためらう一因となったとの見方もある。これに対し各自治体は相談体制の拡充、新生児への育児応援金給付といった支援を行ってきた。

 ただ、コロナ禍の影響は長期に及ぶかもしれず、収束後に子どもを持ちたい人が増えるかどうかは不透明だ。出生数の急激な減少は一時的なものとの楽観論は捨てなければならない。むしろ積み残されていた問題への対応を迫られていると見るべきだ。

 各種調査によると、夫婦が理想とする数の子どもを持たない最大の理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎること」。感染拡大に伴う休業要請などでは多くの非正規労働者が雇用調整のしわ寄せを受けたが、経済的な打撃が家計に及べば、これまで以上にハードルは高くなる。

 結婚についても障害となるものに資金の不安を挙げる人が目立ち、特に男性は非正規労働者の未婚率が高いことも分かっている。

 結婚や出産をする、しないは個人が自由に選択できる。とはいえ、若い世代が先行きを見通せるよう経済的な不安を払拭(ふっしょく)することは急務だ。

 政府は出産を希望する世帯への支援として不妊治療の保険適用や「男性版産休」の新設を打ち出している。一方で「待機児童ゼロ」など目標を掲げつつ達成していないものも多い。過去の少子化対策を検証し、財源配分を見直すなどして必要度の高いものから確実に実行していくことも求められる。

 コロナ禍は、画一的な働き方や東京一極集中の脆弱(ぜいじゃく)さも浮き彫りにした。これを機にテレワークなどを柔軟に活用し、若者が地方で安心して生活していけるような取り組みも進めたい。国や自治体には施策立案に際して子育て世代の意見を積極的に聞いてもらいたい。

 大切なのは、社会全体で将来世代を育むという強い決意と、そのメッセージを若い人たちに伝えることである。安定的な支援が約束されてこそ初めて、産みたいと思える社会が実現するのではないか。

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