山陽新聞デジタル|さんデジ

米軍駐留経費 欠かせない妥当性の検証

 日米両政府は、今月末で期限が切れる在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定について、暫定的に現行水準を1年延長する「改正議定書」に署名した。

 これにより、日本の2021年度負担額は2017億円に据え置かれる。22年度以降については年内合意に向け改めて交渉するが、日本にとって厳しい展開も予想される。

 日米地位協定では基地の維持経費は米側で負担するのが原則だ。だが、円高や米国の財政赤字などに配慮して1978年度から、日本が一部を肩代わりするいわゆる思いやり予算を開始。その後、範囲は基地の光熱水費や従業員給与にまで及んでいる。日本の負担は経費の7割を超え、他の同盟国に比べ格段に重い。

 本格交渉を先送りしたのは新型コロナウイルス感染拡大に加え、1月に発足したバイデン米政権と本格協議する時間がなかったことなどによる。協定の期限が迫る中で失効回避を優先した形だ。

 トランプ前米大統領は、同盟国に対して「安全保障のただ乗りだ」と、大幅な負担増を求めてきた。ボルトン元大統領補佐官は回顧録の中で、現行の4倍超に当たる約8400億円の負担を求める考えを日本側に伝えたとされる。

 厳しい財政事情や法外な要求に対する国民感情からしても、日本は断じて応じるわけにはいかない。今回、同盟国重視を掲げるバイデン氏が日本側の提案した暫定的な現状維持を受け入れたことは評価できよう。

 だが、楽観は禁物だ。トランプ氏ほどではないにしても、同盟国に負担増を求める基本姿勢は変わらないとされる。中国の覇権主義的な動きを警戒するバイデン政権が、日本に対してさらなる負担増や役割の拡大などを求めてくることは予想できる。

 加えて米議会の突き上げもある。上院外交委員会の筆頭委員を務める共和党議員は、インド太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増していることを踏まえ、バイデン政権に対し、日本に負担増を求めるよう要請した。

 こうした状況の中、今後展開される22年度分以降の交渉で、日本が米国との新たな関係をどう築くか。政権の力量が問われる。

 まず現行水準の妥当性の検証が欠かせない。日本は米軍駐留経費とは別に基地周辺の対策費も負担。高額な米国製兵器の購入なども負わされた。日本は受け身の交渉だけでなく、具体的な根拠を示し、米側に粘り強く改善を働き掛けていくべきだ。

 同盟関係の基本は国民の理解にある。そのためにも、日米安全保障体制全体を見直す中で、双方が果たすべき役割について幅広く協議し、妥当な負担額を打ち出してほしい。日本にとって著しく不平等で、基地周辺住民の不安を高めている日米地位協定の抜本改定に道筋をつける契機にもするよう求めたい。

社説

あなたにおすすめ

さんデジ特集

TOP