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21年春闘 利益は還元して好循環を

 2021年春闘が本格化した。基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)を6年連続で2%程度要求する連合に対し、経団連は各社一律の賃金引き上げをけん制しており、14年から続く賃上げの流れをどの程度維持できるかが焦点となる。

 新型コロナウイルス禍で経営環境は悪化しており、自動車業界でベア要求の見送りが相次ぐなど、賃金改善の動きは鈍っている。経済を下支えできるかどうかは、「巣ごもり需要」などで業績が伸びている企業の対応が鍵だ。経営側には最大限の賃上げ努力を求めたい。

 経団連の中西宏明会長はおととい、「労使フォーラム」に寄せたメッセージで「事業継続と雇用の維持が最優先」との見解を示した。労使の主張は隔たりが大きい。

 経団連は春闘交渉の指針で、各社の収益にばらつきがある中、業種横並びや一律の賃金引き上げは「現実的ではない」と指摘して、業績が振るわない企業のベアは「困難」とした。一方、好業績の企業はベアも「選択肢」とし、自社の状況に適した対応を求めた。業績に応じて方針を書き分けたのは初めてという。

 確かに飲食や宿泊、航空など厳しい経営状況にある業種では人員削減やボーナスの抑制に踏み切る企業も多い。こうした企業が賃上げに否定的なのはやむを得まい。雇用の維持に尽力してもらいたい。

 だが、好業績の企業は利益を賃金に還元し、経済の好循環につなげるべきだ。連合の神津里季生(りきお)会長は先週の記者会見で、企業規模や雇用形態による格差是正が必要と強調し、経営側に対して内部留保を活用するなどして「賃上げに積極的になってもらいたい」と求めた。コロナ禍による停滞ムードに便乗した対応は控えねばならない。

 働き方の見直しもテーマとなる。経団連の指針は感染症拡大を機に企業でテレワークなどの導入が相次いだことを踏まえ、働き方改革を加速する必要性を訴えた。柔軟な働き方の定着に向けて「硬直的な労働時間法制を見直すべきだ」とも強調した。

 これについて連合は「ただでさえ過労死、過労自殺が後を絶たない状況で法制度のたがを外す必要は全くない」と批判している。時代は変わっても、働く人の保護が重要なのは言うまでもない。

 医療関係者らコロナ禍の中で社会を支える「エッセンシャルワーカー」や、雇用形態が不安定で景気低迷の影響が深刻な非正規労働者の待遇改善も必要だ。

 今年は労働分野の制度改正も相次ぐ。70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする「改正高年齢者雇用安定法」が4月に施行されるほか、非正規雇用で働く人と正社員の不合理な待遇差を認めない同一労働同一賃金が中小企業にも拡大される。多様な人が安心して働けるよう労使でしっかり議論してほしい。

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