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米国で暮らしていた日本人女性が…

 米国で暮らしていた日本人女性が近所で農場を営む「ジュディスおばさん」と知り合う。出身地を尋ねると袖をまくり、腕に残る番号の入れ墨を見せてくれた▼第2次大戦中、ナチス・ドイツが占領したポーランドに設けたアウシュビッツ強制収容所にいた証しだ。ユダヤ人生存者の1人だった。「私が書いた本、読んでみる?」。渡された手記に衝撃を受け、女性は日本語に訳した。「アウシュヴィッツの地獄に生きて」(ジュディス・S・ニューマン著、千頭宣子(ちかみのりこ)訳)は1993年に出版され、先月に文庫版が出た▼ジュディスさんは既に亡くなったが、残された手記は収容所の生活を詳細に伝える。人間はここまで残虐になれるのか。何度も天を仰いだ▼きのう27日で、同収容所は解放から76年を迎えた。ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を知ることはコロナ禍のいま、大切だろう▼感染症が流行するたび、ユダヤ人を原因とするデマが流れ、差別が広がった。第1次大戦後の混乱や不況で、不安を抱いたドイツの人々が怒りの矛先を向けたのがユダヤ人だった。歴史を学べば冷静さを保つ助けになる▼文庫版の帯に、収容所跡を管理する博物館の元館長が若い世代に向けて語った言葉が紹介されている。「君たちに戦争責任はない。でも、それを繰り返さない責任はある」。胸に刻みたい。

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