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世界にはばたく才能支援 映画「スパイの妻」プロデューサー・岡本英之

「信頼する作家の作品や企画を、今後も形にしていきたい」と話す岡本
「信頼する作家の作品や企画を、今後も形にしていきたい」と話す岡本
映画「スパイの妻」の一場面((c)2020NHK,NEP,Incline,C&I)
映画「スパイの妻」の一場面((c)2020NHK,NEP,Incline,C&I)
 昨秋のベネチア国際映画祭で監督賞(銀獅子賞)に輝き、脚光を浴びた映画「スパイの妻」。プロデューサーを務めた岡本英之(41)=玉野市出身=は、企画から携わり、巨匠の黒沢清監督、気鋭の映画人で脚本を担った浜口竜介らを支えて成功に導いた。優れた作品の企画者に贈られる新藤兼人賞・プロデューサー賞も受賞した岡本に、“陰の立役者”としての思いを聞いた。

 「元々プロデューサーになろうと思っていたわけではない。自分なりの方法で、才能ある人たちが世界にはばたくサポートをしたかった」と岡本は語る。

 玉野高卒業後、大学進学で上京。在学中にバンドを結成し、卒業後も音楽活動を中心にしつつ、同年代で映画の道に進む浜口らと交流を深めた。友人の作る自主映画に出演したり、劇中曲を提供したりするうちに、自らも映画の世界に引き込まれ、気付けばプロデューサー業を担っていたという。

 手掛けた中で注目を集めたのが、素人女性4人を主演にした浜口監督作品「ハッピーアワー」(2015年)。神戸市民向けのワークショップから生まれた異色作で、スイス・ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した。

 それを機に神戸との縁ができたことが、スパイの妻を製作するきっかけとなった。企画段階で岡本は「神戸を舞台にしたドラマを作る」ことだけを提案。浜口と、長年のファンで神戸市出身である黒沢監督、浜口と共に脚本を手掛けた野原位(ただし)の3人に創作は託し、自身は企画から映画の公開に至るまで、裏方として作品作りの全てを支えた。

 「監督、脚本の3人に、音楽の長岡亮介(東京事変のギタリスト)など、いずれも初の組み合わせだが、全てがうまくかみ合った。世界中の人に見てもらい、プロデューサー冥利(みょうり)に尽きる」と振り返る。新藤兼人賞の審査員からは「昨今の日本映画でゼロからオリジナル作品を立ち上げ、成功に導くことは奇跡に近い」との評価を受けた。

 そんな岡本の“縁の下の力持ち”的な活動は、故郷にも向けられている。家業の手伝いで09~13年に玉野に戻って暮らした際、次第に町の活気が失われていくのを肌で感じたという。盛り上げに何かできないか、とイベント企画会社などと連携。王子が岳や深山公園でボルダリングと音楽を楽しむイベント「瀬戸内JAM」を18年から毎年開催している。

 今後の抱負について「受賞におごることなく、自分の信じる作家たちを支え、多くの人に感動を届けられるような作品を提供したい。岡山でも活動を続け、新しい芸術表現が生まれるような場を作っていけたら」と話した。

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 「スパイの妻」は2月5日から、MOVIX倉敷で再上映される。

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 スパイの妻 太平洋戦争前夜の神戸を舞台にしたサスペンスドラマ。出張先の満州で偶然恐ろしい国家機密を知った貿易商の夫と、夫を支えて共に機密を世に知らしめようとする妻の姿を描く。出演は蒼井優、高橋一生、東出昌大ら。

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