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ハンセン病家族 低調な補償に映る深い傷

 国の誤った隔離政策によって、差別に苦しむハンセン病元患者の家族に対する補償法施行から1年が過ぎた。今月13日時点の申請受け付けは6431人、認定は5885人で、国が推計する人の4分の1どまりと低調だ。

 根深い偏見や差別を恐れ、申請に二の足を踏む人がやはり少なくないのだろう。身内に元患者がいることを家族にさえ伝えていない人もいるとされる。

 家族が受けた傷の深さを浮き彫りにしている。申請期限は施行から5年と限られており、申請についての啓発、サポートに力を入れ、一人でも多くが補償を受けられるようにしなければならない。

 ハンセン病は「らい菌」による感染症で感染力は弱いが、国は1996年のらい予防法廃止まで元患者らを療養所に収容する隔離政策を続けた。2001年、元患者による国家賠償請求訴訟で、こうした政策を熊本地裁が違憲と判断し、国は控訴をせず謝罪して、補償と検証が進んだ。

 だが、家族の問題は取り残され、昨年6月にようやく、熊本地裁が国の責任を認めて賠償を命じた。国は再び控訴を断念し、11月22日に議員立法で家族補償法が施行されて、元患者の親や子、配偶者らに180万円、きょうだいや孫、めい、おいに130万円の補償金が支給されることになった。

 申請をためらう人の中には、自らの過酷な体験から「もらって全て決着にしたくない」といった、国などの責任に対する厳しい声もある。判決の確定後、国は原告と共にハンセン病問題の啓発の在り方を検討してきたものの、新型コロナウイルス禍で協議が延期になるなどして、あまり進んでいないという。

 無論、問題を解決済みとすることはできない。自治体とも連携し、実効性のある施策を検討してもらいたい。

 元患者は取り返しのつかない被害を受けたが、隔離によって社会内での差別からは一定の距離が置かれた側面もある。一方、残された家族は地域で偏見差別に直接さらされた。家族訴訟弁護団の共同代表が先日の本紙記事で、そう語っていたことも重く受け止める必要がある。

 大元は国の政策だが、地域で実際に差別したのは、社会の側にいた私たち一人一人だったとの指摘である。

 感染症と偏見差別の問題はコロナ禍で繰り返されている。感染した人を社会にとって危険な、迷惑な存在だと捉え、排除しても構わないとする風潮に胸を痛める元患者や家族は多いに違いない。

 一人一人に問われるのは、そうした偏った声が身近であったとき、誤りと言えるかどうかだろう。瀬戸内市の長島愛生園、邑久光明園と高松市の大島青松園の三つの国立ハンセン病療養所があり、ハンセン病問題啓発の先頭に立たねばならないこの地域だからこそ、特に自覚したい。

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