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大卒内定率下落 幅広い支援が必要な時だ

 来春卒業予定で就職を希望する大学生の10月1日現在の内定率が、昨年の同時期に比べて7ポイントも減り、69・8%にとどまっていることが、文部科学、厚生労働両省の調べで明らかになった。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済的に打撃を受けている企業が採用を手控えていることに加え、採用活動自体が遅れていることなどが原因とされる。放置することなく、官民挙げて学生の活動を支援したい。

 内定率の下落が7ポイントを超えたのはリーマン・ショック後の2009年の就職活動期以来のことで、この時期に70%を切るのは5年ぶりだ。短大や専修学校は過去最大の落ち込みだという。突然の雇用環境の悪化は、学生にとって寝耳に水の事態だろう。

 コロナ禍の影響を直接受けている航空、鉄道関係の企業が軒並み採用を絞り込んだ。全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスや日本航空は、旅客需要が回復しないため、来年度に向けた採用活動は、内定者のみとして以後は中止。再来年度もさらに削減する見込みだ。

 旅行会社やホテル、テーマパークなども、軒並み採用活動の中止や、募集人員の大幅削減に踏み切っている。文系学生に特に厳しく、希望職種が「狭き門」となって苦しんでいる学生も多かろう。

 感染拡大防止のための外出自粛期間もあって、大学から就職に関する情報を得たり、友人同士で情報交換したりする機会も大幅に減ったことだろう。学生の情報不足は何としても救いたい。大学側の細やかな働きかけも求めたい。

 中国・四国地区の内定率が59・7%で全国のブロックの中で最低になっていることも心配だ。昨年から10・4ポイントも低くなっている。一般の有効求人倍率では、岡山、広島、香川県などは常に上位にある。県や経済団体も調査を急ぎ、求人と求職のミスマッチがあるなら情報提供し、是正してもらいたい。

 バブル経済が崩壊した後の1990年代半ばから10年ほど、大卒者が就職難にあえいだ。この時期に社会に出た人たちは「氷河期世代」と呼ばれる。40代半ばから30代半ばになっている世代で、非正規雇用で働いている人も多く、少子化の原因になっているとの指摘もある。決して、第二の氷河期世代を生むことがあってはならない。

 政府は卒業後3年以内の既卒者は新卒者扱いとするよう経済団体に要請している。企業の中には、一括でなく通年採用に踏み切るところも出始めているが、まだ少数派だ。コロナ禍の収束が見通せない中で、企業が前向きに学生を受け入れるための雇用、経済対策に、さらに力を入れる必要がある。内定取り消しにも目を光らせてもらいたい。

 学生を放置することなく、一人でも多くの就職内定を実現するため、すべての関係者が力を合わせる時だ。

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