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コロナと東京五輪 安全の裏付けをどう示す

 国内外で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。その中で、どう実施にこぎ着けるのか。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が先ごろ来日し、菅義偉首相らと会談。来夏に延期した東京五輪・パラリンピックを観客を入れて開催することなどで一致したが、道筋は定かでない。

 バッハ氏の来日は、大会延期が決まって以降初めてだ。菅氏は大会を「人類がコロナウイルスに打ち勝った証し」として開催する決意を表明。海外から観客を受け入れる想定で進めていると説明した。バッハ氏は「スタジアムに観客を入れることに確信が持てた」と賛意を示した。

 この時期にバッハ氏が来日したのは、大会の開催に懐疑的な空気や、選手たちの不安感を払拭(ふっしょく)するためだ。必ず開催するとの決意をアピールする狙いがあったのだろう。

 五輪やパラリンピックは、世界トップレベルの競技力に触れ感動を与えてくれる。選手たちも延期という異例の事態への戸惑いや苦難を乗り越え、1年遅れの“晴れ舞台”に照準を合わせて調整を進めている。

 今度こそ大会を開催し、世界から集う選手たちに思う存分競い合ってもらいたいのはやまやまだ。しかし、現状を見ると何とも悩ましい。

 日本国内では、感染拡大が「第3波」の様相を呈している。感染者が最多の東京都では、独自の警戒レベルを最も深刻な「感染が拡大している」に引き上げた。欧米などでも感染が猛烈な勢いで広がり、ロックダウン(都市封鎖)するところも出ている。

 大会を開催するには、まず選手の安全確保が大前提だ。先日、大会運営のテストケースとして米国、中国、ロシアの選手を招いた体操の国際大会が厳格な管理の下で行われた。だが、五輪は規模が格段に大きく、選手村などでの3密を心配する声もある。バッハ氏が示したIOC負担による参加選手らへのワクチン接種も、効果と副作用などのさらなる検証が必要だろう。

 大きな問題が海外からの観客の受け入れの可否である。政府は、感染状況が安定した国・地域からの観客には14日間の自主待機措置を免除し、公共交通機関での移動も容認する方針だ。しかし、入国後の把握や対応には限界があり、感染が広がりかねない。

 観客を入れることへの固執には、それぞれの思惑がある。IOCはスポンサー企業との約束を果たさなければ五輪ビジネスが揺らぐという危機感だ。国内的には900億円のチケット販売収入を見込む大会組織委員会が赤字を防ぎたいためだろう。

 安全を実感できてこそ、大会を喜び合える。そのためにも利害を背景に「開催ありき」で突き進むのは禁物だ。世界の感染状況を見ながら、どういう大会にするのかや、安全の裏付けを分かりやすく示してもらいたい。

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