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62年間、連れ添った妻を亡くし…

 62年間、連れ添った妻を亡くした。遺品の「断捨離」を進めたいが、ためらうばかり。ある日、不意に感謝の思いがわいた。妻の肌を守ってくれた肌着、身を飾ってくれた衣装に「ありがとう」▼一つ一つのモノに頭を下げながら処分していく行為を「感謝離(かんしゃり)」と名付けたのは河崎啓一さん。元銀行員で、首都圏の高齢者施設で暮らす91歳だ。自身の体験を昨年、新聞に投稿したところ、思いがけない反響が広がった▼出版社から声を掛けられ、夫婦の歩みをつづった初の著書「感謝離 ずっと一緒に」(双葉社)が出版された。同名の映画も作られ、今月から岡山市など全国で公開されている。共感が広がるのは、前向きに人生を歩もうとする姿が、同じ経験をした人たちを励ますからだろう▼亡き妻の和子さんに語り掛ける河崎さんの言葉に胸が熱くなる。「62年のパートナーだった、と考えたのは誤りだった。2人の間に終止符は存在しない。これからもずっと夫婦だ。どこまでも」▼きょうは「いい夫婦の日」。普段は言葉にしづらい感謝の気持ちを伝え合う夫婦もいれば、心の中でそっと、在りし日の伴侶をしのぶ人もおられよう▼記念日にちなんだ今年の「いい夫婦 川柳コンテスト」の大賞は〈コロナ禍で 夫婦の絆 試される〉。しばらく続く忍耐の日々を支え合い、乗り切りたい。

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