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温室ガス50年ゼロ 遅れ挽回へ道筋提示急げ

 大規模な干ばつや山火事、豪雨などを引き起こす地球温暖化が、気候危機と呼ばれるほど深刻さを増している。この問題を食い止めようと国際社会で強まっているのが「脱炭素」の動きだ。日本政府もようやく重い腰を上げた。

 菅義偉首相は先月、二酸化炭素(CO2)など国内の温室効果ガス排出を2050年に「実質ゼロ」にすると表明した。環境省や経済産業省、内閣府が設置した戦略推進会議が具体策を検討しており、数値目標や支援策の実行計画を年内にまとめるという。

 これまでの政府目標「50年までに80%減」から前進し、脱炭素への明確な意思を示したことは評価したい。だが既に120余りの国・地域、企業などが「50年実質ゼロ」を掲げて取り組んでいる。立ち遅れは否定できず、ゼロ達成に向けた30年間の道筋をしっかりと示し、強い決意で実施を急がねばならない。

 実質ゼロは温室効果ガスの排出量と森林などで吸収する量が釣り合う状態で、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」は50年までの世界全体での実現を目指す。排出量の大半は石油、石炭など化石燃料を燃やすと出るCO2。そのため、欧州などが率先して化石燃料への依存から脱却する脱炭素を進めてきた。

 日本でも脱炭素の鍵を握るのは、主な排出源である発電などのエネルギー産業である。先月から経産省は30年度に向けた「エネルギー基本計画」の見直しを始めている。現在の計画では石炭や液化天然ガス(LNG)など火力が半分以上を占めるが、排出量の多い電源構成を抜本的に修正し、太陽光や風力など再生可能エネルギーを最大限活用することが欠かせまい。

 原発の位置付けも課題となる。菅首相は再生エネと共にCO2を出さない電源として、「安全最優先で原子力政策を進める」としている。国民の不信や不安が根強い実態を踏まえ、将来的には比率を下げていく研究と議論を続けるべきだ。

 気候変動対策は経済競争でもある。世界では多くの企業が脱炭素にかじを切り、投資家や消費者も温暖化対策を重視する傾向がある。政府は実質ゼロへの挑戦を「新たな成長戦略」とし、水素エネルギーや蓄電池の技術開発、洋上風力発電への設備投資などを進め、税負担の軽減といった施策で後押しする方針を打ち出している。

 CO2排出量世界1位の中国が60年までの実質ゼロを9月に宣言し、パリ協定を離脱した同2位の米国もバイデン新政権で復帰する予定だ。主導権争いを含め各国の脱炭素の勢いは加速するとみられる。

 同5位の日本が実質ゼロを達成するのは容易ではない。まずは中間点である30年までの目標を現行の「13年度比26%削減」から上積みすることが必要だ。産業や地域社会のあり方を根本から転換する覚悟と実行力が問われる。

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