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津山市出身で新興俳句の旗手とい…

 津山市出身で新興俳句の旗手といわれた西東三鬼は戦時下、〈昇降機しづかに雷の夜を昇る〉の句が世情不安をあおるとされ、言論弾圧に遭った。その後、東京を逃れて長く滞在した奇妙なホテルでの見聞を「神戸・続神戸」という小説にしている▼やはり根が生えたように居座るのは、したたかなバーの女性たちや当時日本に在留したただ2人のエジプト人のうちの1人、掃除好きの台湾人青年ら。そんな宿をユーモアを交えて、コスモポリタン(国際人)のハキダメと呼んだ▼上映中の映画「スパイの妻」も同じころの神戸が舞台である。コスモポリタンを自任する貿易商とその妻が軍靴の音が響く中、軍の非人道的な機密を暴こうとする物語だ▼強圧的な権力とそれに逆らう個人という構図に、今の問題が重なった。黒沢清監督がベネチア国際映画祭で監督賞(銀獅子賞)を受賞し、高く評価されたのは、権力の暴走への懸念がなお絶えないためもあろう▼もちろん、国内だけのことではない。まず思い浮かんだのは、中国による統制が強まる香港だった▼「戦時色というエタイの知れない暴力に最後まで抵抗した」。冒頭の小説で三鬼は、奔放な同宿人に共感を示すように記した。「共通の信仰は『自由を我等に』であった」。そうした抵抗への連帯は、時代や国を超えて示さねばならぬ。

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