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『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』死の影漂う青春映画

 (C) 2018 epo-film, Glory Film
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 ドイツ語圏のベストセラー小説(邦訳『キオスク』)の映画化だ。フロイトが若者に恋の指南をするというアイデアがユニーク。ハリウッド映画ならラブコメに仕立てたかもしれないが、本作が扱うのは、オーストリアがナチス・ドイツに併合されてイギリスへと亡命するまでのフロイトの晩年。青春映画ながら死の影が色濃く漂う。

 主人公は、ウィーンのタバコ店で働くために母と暮らす田舎から上京した17歳の少年。彼は常連客のフロイトから助言を受け、一目ぼれしたボヘミア出身の女性と結ばれる。初恋の相手が無垢な令嬢ではなく、娼婦的な年上の女性というのがいい。クモが何度も登場することから、彼女は少年の母親の分身なのだろう。

 さらに本作は、“水の映画”と形容したくなるほど水のイメージにあふれ、水中撮影も多い。水の中で体を丸める少年の姿は、母の子宮を連想させる。だから、ここで描かれる思春期の性は、生であり、頻出する生き物の死骸やナチスに反抗する者たちが醸す死のイメージと強烈な対を成す。そんなふうに分析したくなるのはフロイトが登場するせいだが、作り手も解釈を期待していることが、主人公が見る思わせぶりな夢の数々からもうかがい知れる。少々頭でっかちな作品かもしれないが、視覚的なイメージによって世界観が構築されており、映画としては正しい在り方だろう。★★★★☆(外山真也)
監督:ニコラウス・ライトナー
原作:ローベルト・ゼーターラー
出演:ジーモン・モルツェ、ブルーノ・ガンツ
7月24日(金)から全国順次公開

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