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コロナ禍の被災地(中)ボランティア 写真洗浄 作業に遅れ

“密”を避けて作業するボランティアら=6月20日、倉敷市真備町箭田
“密”を避けて作業するボランティアら=6月20日、倉敷市真備町箭田
 父親の腕で眠る乳児、みこしの前でピースする法被姿の少女、ウエディングケーキに入刀する若い夫婦…。写真を洗面器の水に漬け、指先で丁寧に泥を洗い落とすと、次第に画像が浮かび上がる。

 6月20日、倉敷市真備町箭田の施設でマスク姿の男女9人が黙々と作業に励んでいた。

 2018年7月の西日本豪雨で水没した写真の洗浄に取り組んでいるボランティアグループ「あらいぐま岡山」。新型コロナウイルスの流行を受け、“密”を避けるため1回の参加人数は12人以下に抑え、一定以上の間隔も空けている。

 「一日も早く持ち主に返したいが、すっかりペースが落ちてしまって…」。事務局の森田靖さん(61)=岡山市北区足守=は悔しそうに話す。

ずれた目標 


 被災間もない18年9月、県内の写真家ら約10人で活動を開始。被災者から依頼された写真を預かり、汚れを落として返却している。

 さほど体力がいらず、手順を覚えれば専門知識がなくてもできることから、一般に呼び掛けると全国から応募があった。多い日は120人以上が写真と向き合ったという。

 豪雨から時間がたつにつれて参加者は減ったが、県内外の団体がサポートに訪れ、ほぼ毎週続けてきた。

 これまで預かった写真は10万枚以上。全てを処理するには5年近くかかるところ、メンバーは被災2年の今年7月に終えることを目指して活動してきた。多くの協力もあって、目標を達成する見通しになっていた。

 コロナ禍に襲われたのはゴールが見えてきた時だった。4月中旬~5月末は活動の中止を余儀なくされ、再開後も処理数は以前の1日約千枚から約300枚に減った。作業終了のめどは「今年中」にずらさざるを得なかった。

焦らず心込め

 
 思わぬ事態で遅れが生じても、手順を軽んじたり注意を怠ったりしないよう、メンバーは作業の心得を肝に銘じている。

 顔や景色にはできるだけ触れずに洗浄する▽他の人の写真と混同しないよう管理を徹底する―などだ。

 「終了時期は延びてしまったが、焦らず最後まで心を込めて処理したい」。グループ顧問の福井圭一さん(49)=倉敷市玉島服部=が気を引き締める。

 「この1枚しかないんよ」「死んだおじいちゃんもこの時は若かったなぁ」

 洗浄を終えた写真を持ち主に渡すと、例外なく感謝の言葉に、しみじみとしたつぶやきが重なってくる。メンバーはそのたびに充実感を得つつ、1枚の印画紙に詰まった思い出の重みをかみしめている。

 災害支援ボランティア 官民組織「災害支援ネットワークおかやま」(岡山市北区表町)によると、倉敷市真備町地区の復興をサポートしている約40団体の大半が、新型コロナの影響で活動の縮小か休止に追い込まれている。

 そうした団体の多くが、地域コミュニティーの再生に力を注いできた。住民や地区外に避難している被災者らを招き、お茶会を開いたりマッサージを提供したりしてきたが、いまは「3密」(密閉、密集、密接)を避けるため開催を控えるケースが相次いでいる。影響の長期化が懸念される中、オンラインで被災者同士をつなげ、孤立化を防ぐ取り組みを始めるグループもあるという。

「西日本豪雨2年」特集サイトはこちら

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