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舞台鑑賞「子ども劇場」再開できず 文化体験の場の減少危惧

NPO法人岡山市子どもセンターが昨年開いた舞台鑑賞会で、ステージに上がってポーズをとる子どもたち。舞台と客席の近さが魅力だ
NPO法人岡山市子どもセンターが昨年開いた舞台鑑賞会で、ステージに上がってポーズをとる子どもたち。舞台と客席の近さが魅力だ
 新型コロナウイルス感染拡大防止で屋内イベントの自粛が続く中、県内で親子向け舞台鑑賞会を行う「子ども劇場」が2月末から全ての公演を中止・延期し、活動できなくなっている。座席の間隔を空けるなど「3密」を避ける方法を模索するが、政府の緊急事態宣言が解除されても再開のめどは立たないまま。演じ手と観客が一体となる熱気や臨場感はオンラインでは代替できず、子どもの文化体験の場の減少を危惧する声も上がっている。

 5月下旬、岡山市北区久米、NPO法人岡山市子どもセンターの事務所には、延期・中止になった舞台公演やイベントのチラシ約10万枚がうずたかく積まれていた。「このまま鑑賞会が開けなければ、会員が離れ、運営にも支障が出かねない」と美咲美佐子代表はため息をつく。

 子ども劇場は文化芸術を通し豊かな心を育もうと1966年、福岡市で始まった市民活動。県内最大の同センターは2001年、岡山市内にあった五つの子ども劇場を統合、会員約300人を抱える。会費と一般向けのチケット収入、市の助成で多彩な劇団を全国から招き年6~8回、演劇や伝統芸能、マジックなどの鑑賞会を企画するが、今年は2月末~7月に予定していた4公演が中止、延期となった。

 毎回参加する氏平裕子さん(39)=同市中区=は「目の前で展開する舞台の迫力はテレビでは味わえない。家族の大きな楽しみだった」。長女の冬雪(ふゆき)さん(10)も「ステージで一緒にマジックをしたのが面白かった。コロナで舞台がなくなってすごく悲しい」と再開を心待ちにする。

 同センターはコロナ収束をにらみ11月以降、1日2公演を3公演にして入場者を減らし、座席の間隔をとっての開催を模索する。ただ「子どもたちは怖い場面でお母さんにしがみつき、面白い場面で隣の友達と笑い合う。まばらな客席で舞台の醍醐味(だいごみ)が伝わるだろうか」と美咲代表。

 子ども劇場は津山市や玉野市など県内に7団体あり、全て7月までの鑑賞会を延期や中止にしている。子ども向け公演を行う62団体でつくる日本児童・青少年演劇劇団協同組合によると、全国では2、3月だけで1100件、3億7千万円分の公演がキャンセルされた。収入が途絶え、存続が危ぶまれる劇団も出てきているという。

 「一つの団体の努力では現状打破は難しい。文化の火を消さないよう、行政の早急な支援が必要ではないか」と1991年から6年間、美作子ども劇場の代表を務めた作家あさのあつこさん=美作市=は訴える。「親子で舞台を見て『よかったね』と笑い合った思い出は必ず心に刻まれる。数値化できないあいまいなものこそ大切にすべきです」

玉野

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